シチューとシフォン

シチューは、煮込み料理のことですよね。

stew と書いて「シチュー」と訓みます。

牛肉と野菜を一緒に煮込んだなら、ビーフ・シチューになるわけですね。

牛タンを煮込んだなら、タン・シチューに一時、タン・シチューつくりに熱心だったお方に、石津謙介がいるのは、ご存じの通り。

アイルランドにはアイルランドのシチューがありまして。「アイリッシュ・シチュー」。

羊肉を使ってのシチュー。ラムやマトンに、たっぷりのポテトを加えるのが、特徴。寒い時には身体を温めてくれる料理でしょう。

シチューが出てくる小説に、『桑の實』があります。

大正二年に、鈴木三重吉が発表した物語。

鈴木三重吉といえば、童話。でも、『桑の實』は大人向けの物語になっています。鈴木三重吉、三十一歳の時の小説。

「おくみは笊を下に置いてこごんで、さつきから馬鈴薯と豚肉とでシチュー見たいなものを拵へかけてゐるのへ入れるつもりで、それらの小さい莢の筋を取りかけた。」

ここでの「おくみ」は物語の主人公。この小説に人気が出たために、当時、「くみ子」の名前をつけることが流行ったそうですね。

これはシチューにうずら豆を加えようとしている場面。

鈴木三重吉は『桑の實』を、ペンで書いた。それ以前には毛筆だったものを。手頃な石を拾って、それでペン先を滑らかに磨ぎながら、書いたという。

『桑の實』のあとがきに、そのように出ています。

その頃の鈴木三重吉は、初台の借家に住んでいて。

月の家賃、四円五十銭だったとも。

八畳、六畳、三畳、二畳、そして台所と風呂がついていて。

シチューが出てくる小説に、『真昼の女』があります。

2007年に、ユリア・フランクが発表した長篇。

「ルバーブのプディング、キャラウエイ入り豆シチュー、ナツメグ入りマッシュポテト。」

これはある日の昼食として。

また、『真昼の女』には、こんな描写も出てきます。

「アルタがヘレーネに、サテンとシフォンでできた膝丈のドレスを手渡した。」

「シフォン」chiffon は、半透明の、繊細な薄絹のこと。

ドレスばかりでなく、ブラウスなどが作られることもある生地。

「シフォン・ケエキ」という時のシフォンは、滑らかな絹地に似ているので、その名前があります。

どなたかシフォンのシャツを仕立てて頂けませんでしょうか。