フィンランドとフィクス・ショセット

フィンランドは、北欧の国ですよね。
森と湖の国。首都は、ヘルシンキ。
やがて、スゥエーデンにも近い国であります。
フィンランドを代表する企業に、「マリメッコ」があるのは、ご存じの通り。
マリメッコMarimekkoはフィンランドならではのテキスタイル・メイカー。
マリメッコは「マリちゃんの服」の意味なんだそうですね。
1951年に、ラティア夫妻によって創業。ことに「ウニコ」のプリント柄はいろんな服や小物類にも応用されています。
1960年代に、当時のジャクリーヌ・ケネディが、マリメッコのドレスを愛用したので、世界的に有名になったものです。
フィンランドはまた、「ムーミン」のふるさとでもあります。
「ムーミン」は、フィンランドの作家、トーベ・ヤンソンが描いた物語。
作者のトーベ・ヤンソンは、1914年8月9日に、ヘルシンキで生まれています。
お父さんのヴィクトルは、彫刻家。お母さんのシグネは、画家だったという。
お父さんとお母さんは1910年に巴里で出会って、結婚。トーベ・ヤンソンは早熟な女の子で、幼少期からヨオロッパの小説を読んでいたらしい。
1928年、トーベ十四歳の時に、絵が『アッラス・クレーニカ』誌に掲載されています。
これをきっかけにトーベは絵本作家の道を選ぶわけですね。
トーベ・ヤンソンの『ムーミン谷の彗星』が世に出たのは、1946年のこと。トーベ、三十二歳の時のことでありました。
ただ、トーベ・ヤンソンは『ムーミン』を公表するつもりではありませんでした。
第二次大戦中の暗い時代に、自分を励ますために、幻想物語を描いていたのです。
その『ムーミン』が偶然、友だちの目にふれて。
「これは立派に絵本になるわ」
それで出版されることになったとのことです。
トーベ・ヤンソンの『ムーミン』がお好きだった作家に、長谷川四郎がいます。

「奇想天外ではあるけれど、そこでかわされる子供たちや親たちの会話は現実的で、日常性が空想の世界とダブってみえ、それがなんでもない日常性の意味を語っているように思われる。」

長谷川四郎は随筆『トーベ=ヤンソン『愉しいムーミン一家』』の中に、そのように書いています。
トーベ・ヤンソンは2001年6月17日。八十六歳で世を去っています。
トーベ・ヤンソンがお好きだったものに、無人島があります。
トーベ・ヤンソンは「クルーヴ」に、無人島を持っていました。夏の別荘として。
1964年にこの無人島を手に入れて、自分で設計し、自分で建築もしているのですが。
電気もガスも水道も来ていないこの無人島が大好きだったという。
トーベ・ヤンソンは孤独を愛した作家だったのでしょう。

フィンランドが出てくる短篇集に、『悪戯の愉しみ』があります。
フランスの作家、アルフォンス・アレーが十九世紀に発表した短篇集。

「ボネットはヘルシンキの人間にまで当ってみた。しかしフィンランドは何の関心も示さなかった。」

これはスケートの売り込みについて。
また、『悪戯の愉しみ』には、こんな描写も。

「イギリスの薬屋はいいねえ。じつに雑多なものを売っている。小型スポンジ。大型スポンジ。ネクタイ。靴下留め。中型スポンジ等々。」

これは物語の主人公がロンドンの街を歩いている様子として。
「靴下留め」。十九世紀の紳士は靴下留めを使ったものですからね。
靴下留め。フランスなら、「フィクス・ショセット」
fixe chaussette でしょうか。
どなたか今も使えるフィクス・ショセットを作って頂けませんでしょうか。