パンとパッド

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone

パンは、ブレッドのことですよね。
ブレッドは、英語。パンはもともとポルトガル語。英語のブレッドが入ってくるよりも前に、ポルトガル語の「パン」がやって来ていたので、今なおパンのほうが優勢なんでしょうね。
たくさんあるパンの中でも、なぜか黒パンが好き。黒パンには、「北」の印象があって。
ロシアだとかシベリアだとか。また、ドイツにも黒パンは珍しくないようです。
黒パンを厚く切って。これまた厚くバターを塗って、マアマレエドを添えて。美味いものであります。この場合には、うんと濃いミルク・ティーが合うのではないでしょうか。

「この汽車旅行の途中で初めて、乗客たちに黒パンが配られた。軍隊用語でいえば黒麺包である。」

胡桃沢耕史著『黒パン俘虜記』には、そのように出ています。時は第二次世界大戦末期。所は、シベリア。
黒パン。最初は口に合わなかった者も、やがて、カステラよりも美味しく感じられるようになった。そうも書いてあります。
胡桃沢耕史は、極端に肉好きの作家で。戦争中に満州に渡ったのも、満州なら肉が食べられるだろうと、考えてのこと。
胡桃沢耕史は、一日三度、肉食がお好きで。それが毎日なら、なお結構というお方だったらしい。
同じ作家でも、野草が大好きだったのが、草野心平。作家でもあり詩人でもあった人物。

「これを客に出すときには、もし、この材料が当ったら、二千円出すと、何回も試したけれどまだ当った人は一人もいない。」

草野心平著『酒味酒肴』に、そのように書いています。「ほうき草」の料理について。
ほうき草をおひたしにすると、すこぶる美味いらしい。

トラピスト・バターをぬり。
その上にミヤギノハギの紅紫と白萩の白をのつけて食べる。
( あしたの朝はヤマヂノホトトギスをのつけよう。)

草野心平著『口福無限』に出てくる詩の一節。
「花のサンドイッチ」。
この詩の場合は、フランスパン。でも、食パンでも、ずいぶんと「花のサンドイッチ」を作って食べたそうですね。

パンが出てくる小説に、『休戦』があります。1963年に、プリーモ・レーヴィが発表した物語。ただし、時代背景は第二次世界大戦中におかれているのですが。

「…………電信士が頭を上げた私を見て私の脇の床に大きなパンの固まりとチーズを置いた。」

また、『休戦』にはこんな文章も出てきます。

「イタリア人は上等の軍服を着ており、詰め物の入った上着も持っていて………………」。

ここでの、「詰め物」は、パッドのことでしょうか。

「今年の流行は、パットを入れないでせう。。この肩、都合がよく出来ていますわ」。

丹羽文雄が、昭和二十七年に発表した『遮断機』に、そんな会話が出てきます。
これは「仁子」が、「九三」に対しての科白として。
蛇足ではありますが。戦後間もなくの日本では、大げさな肩パッドが流行ったことがあったので。
パットは日本語、パッドは英語。
専門用語では、「肩わた」とも。両肩がきっかり左右対称であるのは、むしろ珍しい。ために左右のバランスをうまくとるためにもパッドは必要になってきます。
どなたか美しいコンケイヴ・ショルダーのスーツを仕立てて頂けませんでしょうか。

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone