ブーローニュは、巴里にある森の名前ですよね。ボア・ド・ブーローニュ。この名前は、1417年にはじまっているそうですから、古い。
十八世紀以前のボア・ド・ブーローニュには追いはぎが出たという。パリ人にとっての「ボア」は、ブーローニュのことであるらしい。
十九世紀に入ってからも、紳士と紳士が「ボアへ行こう」と言ったならそれは決闘のことだったそうです。
「実際この森がなかったなら、パリの人間、呼吸困難になるかもしれないですよ」
横光利一の小説『旅愁』に、そんな科白が出てきます。ここでの「森」が、ブーローニュを指していることは言うまでもないでしょう。
1980年頃に、ブーローニュの森を歩いた随筆家に、太田愛人がいます。
「どこが入口で出口かも分からない、ただ森の道が森の中に通じているので足を運べばいいのだ。」
太田愛人著『ヨーロッパ田園紀行』に、そのように書いています。
ブーローニュの森が出てくる小説に、『獲物の分け前』があります。1871年に、フランスの作家、エミール・ゾラが発表した長篇。
「その時カレーシュはブーローニュの森の出口へと急いでいた。」
ゾラの『獲物の分け前』には、何度もブーローニュの様子が描かれるのですが。
ここでの「カレーシュ」は、軽快な四輪馬車のことです。
また、『獲物の分け前』には、こんな描写も出てきます。
「実際、赤い水玉模様の白いフォーラード地のドレスは襟が詰まっていて………」
これは「ルイーズ」の着ているドレスの様子。
「フーラール」foulard は、薄い綾絹のこと。英語なら、フーラード。フランス語なら「フーラール」。男物ではよくネクタイが作られる生地です。
どなたかフーラールのシャツを仕立てて頂けませんでしょうか。