イギリスは、英国のことですよね。もちろんいングランドのことであります。大英帝国。
十九世紀までの大英帝国は世界中に植民地があって、「陽の沈まぬ国」と言われたものです。
イギリスには美味しい菓子がたくさんあります。今ではイギリス菓子が大いに見直されているのは、ご存じの通り。たとえば、スコーンはまるで流行でもあるかのようではありませんか。
「スコーン」sconeは、イギリス英語。アメリカではスコーンに似たものを、「ビスケット」biscuitと言います。菓子というよりも、朝食に近いものです。イギリスでのようにバターやマアマレエドをたっぷり添えて食べることは珍しい。
イギリスの代表的な菓子に、「ダンディー・ケーキ」があります。イギリスでのダンディー・ケーキはお祝いの菓子という印象があります。
「洒落者ケーキ」と言いたいところではありますが。
Dundee cake と書いて、「ダンディー・ケーキ」。スコットランドの港町、ダンディーで誕生した菓子のことです。
十九世紀のはじめにダンディー・ケーキは生まれています。ダンディーは昔から、マアマレエドの故郷でもありまして。ここに「ケイラー」という名前のマアマレエド屋さんがあった。このマアマレエドをなにかに使えないものだろうかと、はじまったのが、ダンディー・ケーキなのです。
素朴な姿の中にオレンジの香りがいっぱい詰まっているのは、そのためなのですね。さらに表面は、アーモンドで飾る伝統があります
ダンディー・ケーキに英国式の濃いミルク・ティーがよく合うのも当然のことでしょう。
イギリスが出てくる小説に、『魔法医師ニコラ』があります。1896年に、ガイ・ブースビーが発表した物語。
「しかし、今わたしが寝ているのはふつうのイギリス製ベッドだった。」
「わたし」が最初寝る時に入ったのは、中国製のベッド。それが目覚めてみると、イギリス製のベッドだった場面。
また、『魔法医師ニコラ』には、こんな描写も出てきます。
「彼は夜会服を一分のすきもなく着こんでいたが、その深みのある黒が、黒い眼や髪としっくりあっていた。」
ここに「彼」とあるのが、「魔法医師ニコラ」なのですね。
「夜会服」。十九世紀末のことですから、おそらく「イヴニング・ドレス」evening dress でしょう。燕尾服。ホワイト・タイ。
今現在もっとも仕立てが難しい男の服です。でも、実際に仕立ててみると、イヴニングほど着映えする洋服も外にはないでしょう。
どなたか十九世紀末のイヴニング・ドレスを再現して頂けませんでしょうか。