沈黙とスリーピース

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沈黙は金なんだそうですね。これに続けて、「雄弁は銀」となるんだとか。
金にも銀にもなれず、アルミかメッキのような私は日々反省しております。
『沈黙』はまた、映画の題名でも。篠田正浩版と、マーティン・スコティッシュ版とがあるのは、ご存じの通りでしょう。
『沈黙』は、もともと遠藤周作の小説。『沈黙』の主題がキリスト教ということもあって。日本のみならず、海外でも話題となったものです。篠田正浩は『沈黙』を読んで、なんとか映画にしたい。
それで、遠藤周作を訪ねて、映画化の話を。遠藤周作、最初は乗り気ではなかった。でも、最後になって、承諾。その時のひと言。
「かわいい娘を嫁に出す想いです。」
これを聞いた篠田正浩、遠藤周作の『沈黙』に賭けた想いの深さを感じて、身の引き締まる感じがあったそうです。結局、遠藤周作は映画『沈黙』の脚本にもかかわって、ひと味違う『沈黙』に仕上がっています。
遠藤周作の『沈黙』を読んだひとりに、英国の作家、グレアム・グリーンが。グレアム・グリーンは『沈黙』の感想を認めた長文の手紙を書いています。
ある時、遠藤周作はロンドンに。ロンドンの某ホテルに宿泊。そのロンドンのホテルのエレベーターで、相客とふたりに。その時のことを、遠藤周作は。

「三つ揃いの服を着た老紳士が一人いて、「何階ですか」と親切にボタンを押してくれた。」

遠藤周作著『グレアム・グリーンをしのぶ』の中に、そのように書いています。遠藤周作は部屋に戻ってからやっと、その「老紳士」がグレアム・グリーンだったことに気づく。すぐにフロントに電話して、グレアム・グリーンにつないでもらって。ホテルのバアで、一献傾けたという。その時、グレアム・グリーンは、遠藤周作に言った。

「君はもう一寸、たべなさい。体を丈夫にしてくれたまえ」

これが『グレアム・グリーンをしのぶ』の、最後の一行なのですが。
「老紳士」にはなれそうもありませんが。せめて、スリーピース・スーツくらいは着てみたいものです。

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