ダブル・プレイとダッフルコート

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ダブル・プレイは、野球での言葉ですよね。打者の打った玉を三塁手が、一塁に投げ、一塁が二塁に投げて、二人の走者ともアウトにすること。
ダブル・カフなら、おしゃれ語にもあります。袖口を二重に折返した式のもの。ダブル・ブレステッドは、両前の上着。時に「ダブル・ボタン」と呼ぶこともあるようですが。

ダブル・プレイが出てくる小説に、『陽のあたる坂道』があります。昭和三十一年に、石坂洋次郎が発表した物語。なぜ、『陽のあたる坂道』の題なのか。当時の自由が丘の富豪の家が背景になっているので。
『陽のあたる坂道』は同じ題名で、映画化されたこともあって、広く識られている小説でしょう。映画は日活で、石原裕次郎の主演でしたね。

「ぼくたち、みごとなダブル・プレイを食ったんだ。」

これは「雄吉」の科白として。同じホテルの部屋に父親と息子とを、鉢合わせさせられて。一部屋に男二人なので、「ダブル・プレイ」と表現したのでしょう。

『陽のあたる坂道』には、こんな文章も出てきます。

「カーキ色のダッフルコートを着て首にえんじ色のマフラーを巻きつけている、肩幅の広い青年こそ、田代信次だったのである。」

石坂洋次郎の『陽のあたる坂道』には、何度も「ダッフルコート」が登場します。当時の石坂洋次郎の眼には、新しい若者風俗としてのダッフルコートが、印象的だったものと思われます。

ダッフルコートは第二次世界大戦以後、放出品として、市場に出たものです。放出品ですから決してお高くはない。それで、充分暖かいので、若者の人気を得たのでしょう。
前合わせは、独特のトッグル・ボタン。右前にも左前にも、着ることができます。女の子でも男の子でも。
これもダッフルコートのダブル・プレイと言って良いのでしょうか。

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