ジンとカマーバンド

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ジンはよく使われる酒ですよね。もちろん、ジンをそのまま飲むこともないではありません。が、たいていはカクテルの基酒として。
たとえば、マティー二。ごく乱暴に申しますと、ジンとヴェルモットを混ぜると、マティー二のできあがり。ただし、このふたつの酒の混ぜ方に百も千ものやり方があるんだそうですが。
ジン gin はその昔、オランダで生まれたものだと考えられいます。 1660年頃の、ライデン大学で。当時、ライデン大学に、シルヴィウス教授という人物がいて。新しい香水の研究をしていた。それはジェニパーベリーの実からその薫りを抽出しようと。でも、その結果として誕生したのが、薬酒だったと。「ジェニパーベリー」がいつの間にか省略されて、「ジン」になったんだそうですね。
その後、1689年になって。オランダのウイリアム三世が、英国王となる。この時に、ジンが英国に伝えられて。大流行。通称、「ロイヤル・ポヴァーティ」。「貧乏人のための王様の酒」と呼ばれたという。
ジンが出てくる小説に、『事件の核心』があります。もちろん、グレアム・グリーンの名作。

「注文した苦味入りのジン酒を待つあいだ………」。

これは主人公の、ウイルスンの様子。物語のはじめの部分。というよりも、『事件の核心』は、ジンの薫りに満ちています。何度も何度も繰り返して、ジンを飲む場面が描かれます。また、こんな描写も。

「彼はかつて、予防用腹帯がすばらしくうまく取り扱われる映画を見たことがあった…………」。

「予防用腹帯」の横に、「マムマバンド」のルビがふってあります。ここから勝手にカマーバンドを想像してしまったのですが。
「映画」というのは、『ベンガルの槍騎兵』のこと。ゲイリー・クーパー主演の、1935年の映画。
召使いがカマーバンドを持ってくると、器用にくるっとひと回り。と、あっという間にカマーバンドがまかれてしまう。
カマーバンドは十九世紀末の、インドで英国人が考えた腹帯。もちろん盛夏用の礼装用ウエイストコートだったのですね。

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