ポーピエットとポアンカレ・スーツ

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ポーピエットという料理があるんだそうですね。フランス料理のひとつとして。ポーピエットは、ごく簡単に言って。肉を肉で包んでから調理する手法のことなんだとか。
ポーピエット paupiette は、ラテン語の「パレア」 palea から来ているらしい。それは「肉厚部分」の意味だったとか。フランス語としては、十八世紀から用いられているそうですね。
肉を肉で包んで。それはまあ、美味しいでしょうね。贅沢でもあります。
贅沢なフランス料理といえば。1983年2月22日に、贅沢な晩餐会が開かれたことがあります。
とにかく歴代の天皇がお召しあがりになったフランス料理を再現しようとの企画ですから、「贅沢」と言って間違いではないでしょう。
「天皇のフランス料理」を企画したのが、「テレビマン・ユニオン」。この企画に協力したのが、荻 昌弘。これはTBSで、放映もされています。
「天皇のフランス料理」を担当するのが、秋山四郎をはじめ、名料理人だったのは言うまでもありません。では、その食材一式をどうしたのか。
荻 昌弘が中心になって、フランスに買出しに。ありとあらゆる食材を、金に糸目をつけずに、買いに買って。たぶん、この食材だけで数千万円はかかっているでしょうね。
荻 昌弘著『天皇のフランス料理』に、詳しく出ています。ただひとつだけフランスで買わなかったのが、すっぽん。すっぽんのスープを作るのですが、これは日本のすっぽんに限るとして。まあ、これほど大掛かりな、贅を極める仕事は、TVにしかできないのでしょうね。
ところで話をもとに戻して。ポーピエットの出てくる小説に、『城から城』があります。1957年に、セリーヌが発表した物語。ただし、時代背景は戦前の、1930年代に置かれているのですが。

「朝! 昼! 晩! ジゴ! ハム! ポーピエット! ……………」。

「ジゴ」が羊の腿肉であるのは、言うまでもないでしょう。また、『城から城』には、こんな描写もあります。

「私の「ポアンカレ・スタイル」のとおなじギャバジン………………」。

「私」は、1930年代に巴里で、スリーピース・スーツを仕立てる。ギャバジンで、「ポアンカレ・スタイル」で。
レイモン・ポアンカレは、1910年代にフランス大統領だった人物。そのポアンカレが好んだスーツなので、「ポアンカレ・スタイル」。それは肩幅広く、前ボタン位置の高い、ウエストをはっきり絞ったスタイルだったのです。
ポアンカレ・スーツを着て、ポーピエットを食べに行きたいものですが。

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