ジェラルドとジャケット

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ジェラルドは、男の人の名前ですよね。たとえば、ジェラルド・フォード。かつてのアメリカ大統領であります。
あるいは、ジェラルド・マーフィー。ジェラルド・マーフィーは、アメリカ人ながら巴里に住んだ、富豪。そしてまた、フィッツジェラルドの友人でもあった人物。もちろん、1920年代の話なのですが。

「ジェラルドは優雅な男だった ー すらっとして、健康で、服装にも凝っていた。」

アンドルー・ターンブル著『フィッツジェラルド伝』には、そのように出ています。とにかくステッキの握りがゴールドだったそうですから、羨ましい。
フィッツジェラルドは、このジェラルド・マーフィーのことをさりげなく、あるいは大胆に、モデルとして小説の中に登場させてもいます。1920年代の巴里には、小説に描きたくなるお方が少なくなかったのでしょう。
フランシス・スコット・キイ・フィッツジェラルドは、1896年9月24日。午後3時30分に、生まれているんだとか。お父さんの名前は、エドワード・フィッツジェラルド。お母さんの名前は、モーリー・マッキラン。このふたりは、1890年2月に結婚式を。新婚旅行は、ヨオロッパに向っています。
お母さんのモーリーのお父さんは、フィリップ・フランシス・マッキランで、若いころには、紳士洋品店に勤めていたんだとか。もし、作家、フィッツジェラルドの服装への興味は、この母方のおじいちゃんにある。そうも言えるのかも知れませんが。
フィッツジェラルドの妻が、ゼルダ。ゼルダ・フィッツジェラルド。そしてこのゼルダもまた、小説を書いています。たとえば、『皇太子のお気に召した娘』などの。1930年の発表。この中に。

「ある夏ヘレナが、パッチ・ワークで覆われた緑の洋服を着てゴルフをしていた時のことを思い出す。」

ヘレナは、主人公の名前。パッチ・ワークのゴルフ・ウエアが素晴らしいのかどうかはさておき。ゼルダがファッションに興味があったとは、想像できるでしょう。
ここで話をもとに戻して。ジェラルドが出てくるミステリに、『ジャケット』があります。クリスチアナ・ブランドが、1983年に発表した物語。

「ジェラルドはエルサといっしょに門を出た。」

ジェラルドは、主人公。エルサは奥さんという設定になっています。この短篇の題が、『ジャケット』。

「確かにはでな茶褐色のなめし皮だが、裏にはむくむくした羊の毛皮が使ってあり、ジェラルドは気に入っていた。」

「裏」というより、むしろ羊の一枚革だったのかも知れませんが。むかしの英國空軍の制服にも似ている。そんな形容も出てきます。おそらく、フライト・ジャケットなのでしょう。
いいなあ。一枚革のジャケットで、フィッツジェラルドの初版本を探しに行くといたしましょうか。

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