旅とパンプス

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旅に出るのは、愉しいものですよね。そしてまた、旅もまた時代によって変わるもの。

たとえば、ロンドンからパリへ。今はあっという間に着く。海底トンネルを通って、2時間15分ほど。

昔は鉄道に乗り、連絡船に乗り、また鉄道に乗り換えて、やっとパリに。たぶんひと仕事だったでしょう。

これが少し便利になったのが、1936年代のことなんだそうです。ロンドンのヴィクトリア駅で列車み乗ると。乗り換えることなくパリの北駅に着く。これはドーヴァーからダンケルクまでは、列車ごと船に乗せてしまうからなんですね。

夜の9時にヴィクトリア駅を出ると、翌朝は、パリ北駅。美味しい珈琲とクロワッサンが待っていたわけです。

1936年のアメリカにも、これに似たことがあった。東海岸から西海岸の旅について。たとえばNYからハリウッドへの移動は、大仕事だった。ところが飛行機の発達で、ずいぶんと楽になる。

ひとつの例として。アメリカン・エアラインズが「DC3」を登場させる。午後5時30分にニューアーク飛行場を飛び立つと、翌朝の8時50分に、グレンデール空港着。

このロサンジェルス行きの「マーキュリー便」は、21人乗りを12人乗りに改造した、豪華飛行機。ベッドになって、眠っている間に、ロス。また別に150ドルの追加料金で、個室も用意されていたという。

映画俳優はよくこの個室を使ったという。この「マーキュリー便」の就航が、1936年のこと。1936年、英国、サウサンプトンに生まれたのが、ブライアン・フリーマントル。

ブライアン・フリーマントルが1981年に発表した物語が、『追いつめられた男』。この小説の中に。

「ビリントンは白のパンプスに白のズボンをはき、青い絹のブレザーの下で絹のネクタイが完璧な結び目を作っていた。」

ヘクター・ジョン・ビリントンは、イギリスのローマ大使という設定。「白のパンプス」はどんなスタイルなんでしょうね。

白いパンプスで、旅に出たいものですね。

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