ポロねぎって、ありますよね。ふつうのねぎにくらべて、やや太く、やや短い。下仁田ねぎに、似ていなくもありませんが。ポロねぎは、なんとなくフランス料理に似合いそうな印象があります。
ポロねぎは英語で、「リーキ」leek 。フランス語で、「ポワロー」 poreau 。ポロねぎは、古代ローマの時代からすでに知られていたらしい。そしてどうも元気になれる食材とも考えられていたフシがあります。アメリカの、ネイティヴ・アメリカも、よく食べていて。これははっきりと、精力剤だとされていたという。
辻 静雄著『うまいもの事典』によれば。ポロねぎは、「ポワロー・ア・ラルボワー」にして食べるのがよろしいと、出ています。
「ポワロー・ア・ラルボワー」は、スープ風の料理。鍋にバターを溶かし、小麦粉を軽く炒めて、白ワインを加え、その中でポロねぎを二時間ほど煮込んで、完成。もちろん、塩と胡椒で、味を整える。秋に、一度やってみたいものです。なんでもポロねぎは、秋にいちばん美味しくなるんだとか。
ポロねぎを熱く語る小説に、『最後の晩餐の作り方』があります。1996年に、ジョン・ランチェスターが発表した物語。
「素晴らしい利点をそなえたポロ葱も、しかしながら年中出回っているわけではない…………………」。
『最後の晩餐の作り方』は、たしかに小説なんです。が、不思議な小説。まるで「美食事典」のような仕上がりになっています。
十九世紀にブリア・サヴァランの『美味礼讚』があるなら、二十世紀にはジョン・ランチェスターの『最後の晩餐の作り方』がある。そんな風に言いたくもなってくるほどの名著であります。
では、ジョン・ランチェスターはどんな恰好をしているのか。いや、実際には物語の語り手となっている「タークィン・ウィノット」なのですが。でも、タークィン・ウィノットと、ジョン・ランチェスターは、ほぼ同一人間だと、私は考えています。
「これに黄色の水玉模様の入った地は水色の蝶ネクタイを結び…………………」。
と、はじまってえんえんとご自分の着こなしを語っております。おしゃれなんですね。つまりは、ボウ・タイを結んでいるわけです。
さて、時には。ボウ・タイを結んで、ポロねぎとまいりますか。