ボオは、洒落者のことですよね。いうまでもなく、b e a u と書いて、「ボオ」と訓みます。
たとえば、「ボオ・ブラムメル」だとか。英語の辞書で B e a u B r umm e ll と引くと、「洒落者」と説明されています。ボオ・ブラムメルは通称で、本名は、ジョージ・ブライアン・ブラムメルといったのです。でも、あまりにも身のこなしが美事なので、ついた仇名が「ボオ・ブラムメル」だったのです。
このボオ・ブラムメルをおしゃれの先生にしたのが、後のジョージ四世。当時に、プリンス・リージェンシーでありました。
その頃の倫敦のテイラーでの話。洋服屋が客に言う。
「こちらの生地はこの間、摂政殿下がお作りになったものです。さて、こちらのほうは、先だって、ブラムメル様がお仕立てになった生地です。」
貴族たちは誰一人の例外もなく、後者の生地を選んだと、伝えられています。
洒落者が出てくる小説に、『従妹ベット』があります。オノレ・ド・バルザックが、1846年に発表した物語。『従妹ベット』はバルザックの傑作で、過去に何度も映画化されています。
「もともと主席支払命令官は、男としては、女のアドリーヌに好一対の美男子だった。」
これは、ユロ・デルヴィーの様子。このユロとアドリーヌが結ばれるのですから、美男美女の組み合わせ。
オノレ・ド・バルザックは、ここからボオについて、連綿と語るのですが。また、『従妹ベット』には、こんな描写も。
「金むくのボタンのついた紺の上着と、黒のズボンを見事に着こなし、一点のくもりもないエナメル塗りの長靴をはき……………………。」
これは、モンテス・デ・モンテジャノス男爵の服装。「金むく」ということは、ソリッド・ゴオルド。二十四金のボタンなんですね。
私はたとえ金メッキのボタンでも、洒落者には、なれそうもありませんが。