ティーは、紅茶のことですよね。tea と書いて「ティー」と訓みます。
フランス語なら、「テ」でしょうか。「テ・オ・レ」というではありませんか。ミルク入りの紅茶のことを。
イタリアでも、「テ」te 。ドイツ語でも、「テ」theo 。
英語の「ティー」は1598年頃から用いられているとのこと。これは中国の「茶」がポルトガル船によって運ばれて来たことと関係しているようですね。
つまり中国の「チャ」から、「ティー」が生まれているのでしょう。
日本の「茶」もその意味では同じことです。
日本で「茶」を広めたのは、僧の栄西だったと信じられています。十三世紀に。ただし、高価な薬品として。
1211年(承元五年)には、『喫茶養生記』を著して。栄西、七十一歳の時に。
余談ではありますが、栄西は七十五歳で世を去っています。1215年6月5日に。これも、茶のおかげなのでしょうか。
「茶は養生の仙薬であり、人の寿命を延ばす妙術を具えたものである。山や谷にこの茶の木が生えれば、その地は神聖にして霊験あらたかな地であり、人がこれを採って飲めば、その人は長寿を得るのである。」
栄西の『喫茶養生記』は、そのように書きはじめられています。
栄西が立派だったのは、茶を薦めたのみならず、実際に茶の木を栽培したことでしょう。
茶がグリーン・ティーと呼ばれるのは、ご存じの通り。
これは発酵に頼らない製法。発酵させて仕上げるのが、紅茶。その中間をゆくのが、半発酵茶。たとえば、烏龍茶は半発酵茶なのですね。
「骨牌を弄ぶ事も出来、紅茶の好悪を飲み別けることも出来……」
二葉亭四迷が、明治二十二年に発表した小説『浮雲』に、そのような一節が出てきます。
これはある学校の英語の先生、「石田」という人物について。
日本人が一般に紅茶を飲むようになったのは、明治三十年代のことらしい。明治二十年代にはかなりハイカラな飲物だったでしょうね。
『浮雲』は、小説にあらわれる「紅茶」としては、比較的はやい例だったと思われます。
紅茶が出てくるミステリに、『素性を明かさぬ死』があります。1939年に、英国の作家、マイルズ・バートンが発表した物語。
「本物のファームハウス・ティーは、ずいぶん久しぶりですよ、」
これはスコットランドヤードの警部、アーノルドの科白として。
また、『素性を明かさぬ死』には、こんな描写も出てきます。
「まあ正直なところ、顔はよく見えなかったんです。耳覆いのついた革のキャップをかぶってたんで、」
これはアーノルドが目撃者に人相を尋ねている場面でのこと。
「耳覆いのついた革のキャップ」。私はここから勝手に、「ディアストーカー」deerstalker を想い浮かべてしまいました。
ディアストーカーは、狩猟用のハンティング・キャップ。ただし、従者がかぶる帽子だったのですが。
「ディアストーカー」は、1875年頃からの英語なんだそうですね。
どなたか鹿革のディアストーカーを作って頂けませんでしょうか。