ターフは、芝生のことですよね。turf と書いて「ターフ」と訓みます。
ターフにもいろんな意味があるようですが。イギリスで「ターフ」と言うと、「競馬」を指すことがあるんだとのこと。
英国での競馬は芝生を連想させるから。たとえば、「ターファイト」turfite の言い方があって、これは競馬を仕事にしている人の意味なんだとか。
ターフにはまた「ピート」の意味もあります。ピートが「泥炭」であるのは言うまでもないでしょう。
スコットランドではそこらの土地を掘ると、泥炭が出ることがあります。このピートを乾かしますと、燃料に。
昔のスコットランドではピートを燃料にするのは、ごく当たり前のことだったのですね。
ウイスキイに「ピート臭」の言葉があります。当時は原料の麦を煎るのに、ピートを燃やしたから。このピート臭がまた、ウイスキイの魅力でもあるのですが。
昔のトゥイードにもピート臭はありました。それぞれの織物工房で、微妙にピートの薫りが違う。このトゥイードの染み込んだ匂いから、その産地や銘柄を推理したものです。
「泥炭を溶いて濃く、身の周圍に流した様に、黑い色に染められた重い霧が、目と口と鼻に迫つて來た、」
夏目漱石の『永日小品』に、そのような一行が出てきます。これはロンドン留学中の想い出として。
漱石がロンドンを歩いていて、テイト美術館の先、バタシーまでくると、急に天候が変って。霧が濃くなった様子について。その霧を漱石はピートにたとえているわけですね。当時、いかにピートが身近な存在であったかが、窺えるでしょう。
漱石は「泥炭」と書いて「ピート」のルビを添えているのですが。
ターフが出てくる小説に、『女たちのなかで』があります。1990年にアイルランド出身の作家、ジョン・マクガハンが発表した物語。
「「わしらは自分たちが使う分のターフを荷車一杯運んでいた。その残りを一軒一軒売りに歩いたのだ。」」
これは「モラン」の科白として。
ここでの「ターフ」はピートの意味で用いられているのですが。この「ターフ」は燃料用として売るのですから。
また、『女たちのなかで』には、こんな描写も出てきます。
「汚ない仕事なんだ。戦争は。わしたちはイギリス警備隊のように女子どもを撃ち殺したりはしなかったが、それでも殺し屋の集まりだったのだ。」
これもまた「モラン」の言葉として。
ここでの「イギリス警備隊」は、いわゆる「ブラック・アンド・タンズ」のこと。
1916年、アイルランドに派遣されたのが、「ブラック・アンド・タンズ」。褐色の上着に黒いベルトを締めていたので、「ブラック・アンド・タンズ」と呼ばれたわけですね。
「タン」tan は、「鞣し革」の意味。また、鞣し革に似ている色のことも、「タン」と言います。
どなたか濃いタンのブローグを作って頂けませんでしょうか。