パイとパンタロン・ド・ゴルフ

パイは、菓子のひとつにもありますよね。
pie と書いて「パイ」と訓みます。
たとえば、アップルパイだとか。りんごの甘煮が詰まったパイなので、「アップルパイ」。
シナモンの薫りが漂ってきて、つい誘惑されてしまいます。
りんごがたくさん入っていて、健康にも良いのでしょう。
ひと口に、アップルパイと申し間しても。いろんな種類があるんだそうです。
ひとつの例として。「オールド・ニュウイングランド・フライド・アップルパイ」。
アップルパイを揚げてあるので、「フライド・アップルパイ」。
その昔、英国から渡って来た宣教師が広めたパイなんだそうですね。
熱々のところをふうふう吹きながら食べるパイ。
パイの歴史もさぞ古いんでしょうね。
昭和四年に、尾崎 翠が発表した短篇に、『アップルパイの午後』があります。

「それに、今のアップルパイで思いだしたけれど、松村もお前と同じでアップルパイが好きなんだ、濃いお茶で。」

これは妹に対する兄の言葉として。
尾崎 翠の『アップルパイの午後』ははじめからおしまいまで、兄と妹の会話だけで成り立っています。
昭和四年のアップルパイ、さぞかしハイカラだったのでしょうね。
ここからの想像ですが。大正期には、すでに家庭でアップルパイを食べる習慣があったのでしょう。

「そこには甘ずっぱく煮たリンゴがいっぱいつまった、まあるい、アップルパイが入っていた。私はその大きい一切れをどこから食べようか、コタツにあたりながら食べたんだ。」

森村 桂の随筆『アップルパイのパイ』に、そのように書いてあります。小さい頃の想い出として。昭和のはじめ頃の話でしょうか。
父の友人「井上さん」から頂いたアップルパイのことを。
森村 桂は一時期、「アリスの丘」を開いていましたね。「アリスの丘」は当時、軽井沢にあった喫茶店。喫茶店なんですが、森村
桂の手づくりのケーキがおいしかった店。
アップルパイが出てくる短篇に、『よい絵』があります。フランスの作家、マルセル・エーメの書いた小説。

「たとえていうなら、肉パイ、ひな鳥のまる焼、ポテトフライ、カマンベールチーズ、クリーム入りのチョコレート、そしてフルーツ付きの食事を食べたような気持になる。」

これはある絵を眺めての感想として。
マルセル・エーメが1943年に発表した短篇に、『壁抜け男』があります。マルセル・エーメの代表作。この中に。

「ゴルフ・ズボンと鼈甲の眼鏡ほど今日の若い婦人たちの空想を刺激するものはない。それはシナリオ・ライターの匂いがし、カリフォルニアのカクテル・パーティや夜会を連想させるのだ。」

うーん、そんなものでしょうか。
ここでの「ゴルフ・ズボン」は、たぶんフランス語の
「パンタロン・ド・ゴルフ」になっているのでしょう。
本来ゴルフ用なので、「パンタロン・ド・ゴルフ」。
どなたか純白のパンタロン・ド・ゴルフを仕立てて頂けませんでしょうか。