いちばんとズック

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いちばんというのは、気持の良いものですね。
幼稚園でのお絵描きだろうと、オリンピックだろうと、いちばんはうれしいものでしょう。
ミステリのいちばん。ミステリは読む人の好みで決まるものでしょうが。
昔、中島河太郎というミステリ評論家がいた。本名、中嶋 薫。この中島河太郎が選んだミステリ第一位が、『Yの悲劇』。もちろん、エラリイ・クインの名作ですね。
『Yの悲劇』は1933年の発表。ミステリについてはよく「ベストテン」が話題になるのですが、多くの「ベストテン」で、『Yの悲劇』が第一位になっています。
『Yの悲劇』はどうして一位になったのか。想像ですが、ほかの名作をよく研究したからではないでしょうか。
1920年代後半の人気ミステリは、ファイロ・ヴァンス物。ヴァン・ダインの著作。1926年に『ベンスン殺人事件』を発表して、たちまちベストセラー。
それでエラリイ・クインはなんとかヴァン・ダインを超えたい、と。その研究の結果発表されたのが、『ローマ帽子の謎』。1929年のことです。これが頂点に達するのが、『Yの悲劇』ということなんでしょう。その『Yの悲劇』の中に。

「白いズックのオックスフォード型短靴で、つま先はとがっているが、男物に違いなかった。」

これはコンラッド・ハッターの夏靴。先の尖ったズックの靴、履いてみたい。
ズックは、「ダック」 duck のこと。これはアヒルの商標があったからとも。またオランダ語の「ダック」 doek から来ているとも。
「夏靴のいちばんはズック靴」。なんていちど、言ってみたいものですが……。

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