バナナとサヴィル・ロウ

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バナナは美味しいものですよね。
バナナは果物であるような、野菜でもあるような。とにかく便利な食べ物であること、間違いないようです。
昔のバナナは台湾からの輸入品で、高価この上もなかった。ことに、高雄からの。
バナナの学名は、「ムサ・パラディシアカ」というそうです。その意味は、「楽園の果実」。太古のむかし、エデンの園にはバナナの実がたわわに実っていたらしい。
パリでバナナを買う話。中村武志著『ふだん着のパリ』に出ています。中村武志は1966年にしばらくパリに住んだことがあって。その時の体験を綴った随筆集。
中村武志はどこでバナナを買うのか。マルシェ・サンカンタンで。よく知られているように、パリにはたくさんの「マルシェ」があって。野外市場。マルシェ・サンカンタンはそのなかでもわりあい大きいほうでしょうね。
「バナナ二キロ」と、中村武志は言う。と、店のマダムは上等のバナナを一キロ半測る。その残りは少し色の変わりはじめたのを加えて、二キロにする。
これは見た中村武志は、感心する。合理的だ、と。なぜか。二級品バナナを安く売ると、結局一級品を高く売らなくてはならない。うまくそれを混ぜることで、釣り合いをとることになるのだから。もちろん中村武志流の考えなのですが。
ところで中村武志がロンドンでスーツを買う話。サヴィル・ロウの「ハンツマン」で。
採寸の時、担当者がさりげなく訊く。「ライト・オア・レフト?」中村武志は何のことか、分からない。でも、目白三平には理解できたらしい。
でも、仮縫いどうするのか。中村武志は日本に帰らなくてはならない。担当者は真面目な顔で、言った。
「なあに、問題ございません。私が日本に仮縫いに参りますから………」。
結局、中村武志は仮縫いのために、もう一度ロンドンに行くことになったそうです。

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