コートダジュールとスモーキング

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コートダジュールは、憧れのリゾートですよね。訳して、「紺碧海岸」。その名の通り、海の色がエメラルドのようで。南仏、リヴィエラ、コートダジュール。
コートダジュールの中心は、ル・ラヴァン・ドゥでしょうか。この有名な避暑地からざっと二キロほど離れたあたりに、ラ・フォセットがあります。ラ・フォセットは、「えくぼ」の意味なんだそうですね。
その昔、ラ・フォセットを訪れたのが、瀧澤敬一。瀧澤敬一は、『フランス通信』で知られる随筆家ですね。フランス人女性を妻とし、永くリヨンに住んだ日本人であります。瀧澤敬一はこの時の話を、書いています。1962年『暮しの手帖』64号に、「えくぼ村日記」と題して。
コートダジュールの近くに、キャヴァリエール海水浴場というのがあって。ここに、「ル・クラブ」という名の四つ星ホテルがあったんだそうです。「ル・クラブ」は面白いことに、もし雨が降ったら、その日の宿泊代はただ。そんな話も出ています。
話は変わりますが。1962年『暮しの手帖』64号は、一冊190円。それ以前には、一冊160円ですから、64号から30円値上りしたことになります。10年ぶりに30円高くなった。その値上げについて。

「もうこのままでは、どうにもやってゆけなくなりました。申しわけありませんが、この号から、値上げさせていただきます。」

と、はじまって、懇切丁寧にお詫びしています。いかにも『暮しの手帖』らしいことではありませんか。
とこで、「えくぼ村日記」に戻るのですが。こんな風にあります。

「西隣りにあるレジダンス・ホテルは一つ星のついた高級な家で、夕食には白いタキシードのボーイがただ一人いそがしそうに働いていた。」

もちろんこれは制服としてのスモーキングなんでしょう。
でも、時には自分の、白いスモーキングを着てみたいものであります。

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