ドーナツとドレッシング・ガウン

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ドーナツは、美味しいものですよね。でも、ドーナツをひとつ食べるのは、難しい。「ひとつだけ!」と思っていても。知らないうちに、ふたつめに手が伸びていたりして。ふっと気づくと、みっつのドーナツが消えていたり…………。
もしドーナツを英語で書くなら、 dough nut になるんでしょう。この「ドゥ」は、もともと「練った粉」のことであるらしい。で、ドゥにナッツを加えて揚げたものが、ドーナツなんでしょう。
このドゥと関係があるものに、「ドゥボーイ・ジャケット」があります。ドゥボーイ・ジャケットは、身体にぴったりとフィットした、立襟の上着のこと。なぜ立襟の上着が、「ドゥボーイ・ジャケット」なのか。
第一次大戦時のアメリカのスラングに、「ドゥボーイ」があって。これは若い歩兵を指した言葉だったのですね。彼らのユニフォームには丸い、大きな金ボタンがついていて。これが「ドゥ」に想えた。当時の、丸い揚げ菓子に。それで、「ドゥボーイ・ジャケット」の呼び方が生まれたんだそうです。
ドーナツがお好きであるらしいのが、村上春樹。村上春樹著『村上ラヂオ』の中に。

「揚げたてのドーナッツって、色といい匂いといい、かりっとした歯ごたえといい、何かしら人を励ますような善意に満ちていますよね。」

そんなふうに、書いています。ここから想像するに、村上春樹はドーナツがお好きなのでしょう。村上春樹の好きなものはもうひとつあって、ジャズ。ジャズといえば、村上春樹。以前、ジャズ喫茶を開いていたくらいですから、「好き」を通り越しているのかも知れませんが。
ジャズの話が出てくる小説に、『アムステルダム』があります。英国の作家、イアン・マキューアンが、1998年に発表した物語。

「わたくし、あなたの『怒り』にジャズ・オーケストラの曲をつけたんですが、覚えていらっしゃいますか?」

どうしてここでジャズが出てくるのか。主人公のひとり、クライヴ・リンリーは、さっきょくという設定になっているから。また、こんに描写も出てきます。

「だいたい昼間の服の上にシルクのドレッシングガウンなぞはおって何をしてのだ?」

これは、レインという富豪の自宅での様子。そこを訪れたヴァーノンの印象。
絹のドレッシング・ガウンが似合うのは、夢のまた夢ではありますが。

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