パイシャンとパラソル

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パイシャンという言葉があるんだそうですね。「白想」と書いて「パイシャン」と訓むんだとか。白想は、散歩のこと。
なるほど、散歩していると、頭の中が空白になること、ありますよね。だから、白想なんでしょうか。
深呼吸と同じリクツで、空気をぜんぶ吐きだすと、また新しい空気が入ってくるように、ふと妙案が浮かんだりするものです。
散歩のお好きなお方に、池内 紀がいます。それというのも池内 紀には『散歩本を散歩する』があるからです。この本を読みますと。
池内 紀の書棚には、「散歩用」と書かれ、整理されたファイルがあるらしい。その「散歩用」には目印があって。ハンチングとステッキの絵が描いてあって。「散歩用」の文字を読まなくても、すぐに分かるしかけになっています。
池内 紀は、なにか本を読んでいて、「ああ、行きたい!」と思ったなら、メモを。スクラップを。ぞれが「ハンチングとステッキ」印に収まるわけですね。池内 紀はこれを開くと、散歩の道順がすぐに決まる。池内 紀は散歩の利点を三つ挙げています。

一 思い立つと、すぐに出られる。
二 交通費がほとんどかからない。
三 疲れないし、おまけがつく。

まさに、まさに。はじめての路地を歩いていて、偶然、カフェを見つけたりとか。
ところで「白想」が出てくる小説に、『時間』があります。堀田善衞が1955年に発表した物語。ただし物語の背景は、1937年から1938年にかけての中国に置かれているのですが。

「白想 ( 散歩 ) とは何といい、そして美しい言葉だろう、と考えたことを覚えている。」

また、『時間』にはこんな描写も。

「予期したことながら、伯父が真新しいパナマ帽に灰色の日避けパラソルをさして外見はゆっくりと………………」。

これは、1938年の、中国での日本人の様子。当時、男性用のパラソルがあったのでしょうか。
今年こそ、今年こそ。パラソルを使いたいものですね。

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