手紙とテニス・シューズ

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手紙を頂くのは、嬉しいものですよね。手紙を差し上げるのは…………………。まあ、手紙は大切なものであります。
時と場合によっては、百年後、二百年後に貴重な記録となることがあるかも知れません。

「ワインの扱いについて二、三の助言をいただきたく、書状を差し上げるしだいです。

ワイン貯蔵室の温度はどの程度が望ましいのか?
換気はしたほうがいいのか?
光は入ってもかまわないのか?」

これは1883年1月25日付けの手紙。倫敦のワイン商、「バレット・アンド・クレイ商会」に宛てて。差出人は、チャールズ・ラトウイッジ・ドジソンになっています。
チャールズ・ラトウイッジ・ドジソンが、あのルイス・キャロルの本名であるのは、ご存じの通り。つまり1883年、ルイス・キャロルはワインに一大関心を持っていたことが窺えるでしょう。どうしてなのか。
ルイス・キャロル、つまりオックスフォード大学、数学教師、ドジソンは1882年に出世。クライストチャーチの社交室主任に。この社交室の管轄に、セラーがあったのです。ワイン室が。それでルイス・キャロルは責任上、ワイン商に対して質問をしたのでしょう。
手紙が鍵となるミステリに、『なげやりな人魚』があります。1950年に、E・S・ガードナーが発表した物語。

「どうしてあなたは、堂々とジョージ・オールダーに会って、手紙のことをきかなかつたのです?」

これはもちろん探偵役の、ペリイ・メイスンの科白。また、『なげやりな人魚』には、こんな描写も。

「帰つた時はいつもヨットに乗る時の服装 ー 頸がタートルネックになつた白いセーターに、労働ズボン、テニス靴でした」

この場合の「テニス・シューズ」は、スニーカーのやや古風な、やや上品な表現なのでしょう。
テニス・シューズを履いて。涼しく木陰で、手紙でも書くといたしましょうか。

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