バンコクと番手

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バンコクは、タイの都ですよね。そしてバンコクの正式名称は、覚えられません。あまりにも、長すぎて。落語の「寿限無寿限無」みたいに、長い。都市名の長さとしてはギネス・ブック級ではないでしょうか。
その寿限無の街を通過したお方に、高峰秀子が。愛夫の、松山善三と一緒に。

「僕もその小瓶のソースをステーキの上に注ぎ、あとは黙々とただひたすら食う。コーヒーが済んだよ思うや否や、機は、バンコック空港へ着陸していた。」

高峰秀子 松山善三共著の『旅は道づれ ガンダーラ』に、そのように書いています。
「その小瓶のソース」とは、高峰秀子があらかじめ用意しておいてもの。好みのソースを、機内食の料理にふりかけようという魂胆なのでしょう。
高峰秀子は、実にまあ、いろんなお方と対談なさっています。たとえば、フランス文学者の、渡辺一夫とか。渡辺一夫が五十一歳、高峰秀子が二十八歳の時に。高峰秀子が巴里で住んだ下宿が、以前、渡辺一夫が下宿していたところ。これは偶然というよりも、渡辺一夫が高峰秀子のために、紹介した結果だったらしいのですが。この対談の中に。

「第二の説はね。フレンチ・カンカンという踊りを見たでしょう。あの踊りね、フランス人は“カン・カン” というふうに、表現するんです。あれがアヒルの歩くときの形に似てるでしょう。あのアヒルの鳴き声を、フランス人は “ カン・カン” というふうに、表現するんです。だから、これが語源だという説。」

1952年『毎日グラフ』12月10日号の対談で、そのように語っています。
もう一度、『旅は道づれ ガンダーラ』の戻りましょう。

「細い番手の木綿で、手ざわりも、見た目も、紺地に白ぬきの更紗模様で美しい。」

これは高峰秀子が、松山善三に選んであげたバンコク国際空港の売店でのシャツ。
番手はふつう、100番とか、200番とか言います。高番手ほど、糸が細い。番手の数字が多くなればなるほど、細い糸。着心地もよろしい。
シャツを買うとき、糸番手を気にするようになれば、なかなかの洒落者であるとは言えるでしょうね。

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