風立ちぬとカントリー・ジャケット

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『風立ちぬ』は、堀 辰雄の代表作ですよね。万一、堀 辰雄を知らなくても、『風立ちぬ』は知っているくらいのものかも知れません。
『風立ちぬ』は、昭和十三年に単行本として世に出ています。それからざっと八十年を経て、依然読まれているのは、やはり名作以外の何物でもありません。
どうして『風立ちぬ』かというと。ポオル・ヴァレリイの詩の一節からきているらしい。

風立ちぬ、いざ生きめやも。

『風立ちぬ』の作者は、この一句がどうしても頭から離れてくれない。そこで『風立ちぬ』を書きはじめたという設定になっています。
堀 辰雄は多くの小説を書いています。が、もともとの気質は、堀 辰雄、詩人だったのではないでしょうか。
事実、詩も詠み、詩の翻訳をもしています。

君の着けてゐる、そして君を
飾つてゐる苦しさうなネクタイ
おお 文明なことです
だが、もう君が心地よく呼吸したかつたら
そのネクタイをはづしたまへ

これは、フランスの詩人、アポリネールの『ネクタイ』と題された詩。訳したのは、堀 辰雄であります。
1909年7月13日。ギョウーム・アポリネールは友人の、アンドレ・サルモンの結婚式に出て、詩を朗読しています。その結婚式での詩もまた、堀 辰雄は訳しています。
アンドレ・サルモンは、1881年10月4日に、巴里に生まれた美術評論家。このアンドレ・サルモンと親友だったのが、ピカソ。
1914年頃、巴里で写されたアンドレ・サルモンの写真が遺っています。ここには、ピカソを中心に、モディリニアー二と、アンドレ・サルモンとが写っているのですが。
サルモンはうんと着丈の長い、シングル前三つボタン型の、カントリー・ジャケットを着ています。ポケットもすべて貼りつけで、ハイ・ボタン。ああ、こんなカントリー・ジャケットなら欲しいなあ、と思ったしますます。
なにかカントリー・ジャケットを着て、『風立ちぬ』の初版本を探しに行くとしましょうか。

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