ショコラは、チョコレエトのことですよね。
chocolat と書いて「ショコラ」と訓みます。
ショコラはたしかにチョコレエトなのですが。また、ココアの意味にもなります。
それはちょうど英国で「ホット・チョコレエト」というのに似ています。
チョコレエトもショコラも、もともとはカカオですから、いろんな遣い方があるのでしょうね。
ココアは健康によろしい。そんな印象があるようです。
たとえば、ジンジャー・ココア。ココアにショウガを加えて飲むと、元気いっぱいになれるんだとか。
よく「コーヒー・オア・ティー」とは申しますが。
「コーヒー・オア・ココア」とは、言いません。ココアはまだコーヒーほどには一般的ではないのでしょうか。
「丘々はまるでココァ製であつた。どこでもひとさじすくつて、茶碗にほうりこんで熱いお湯を注げば、たちまちおいしいチョコレットが出来さうなのである。」
昭和八年に、稲垣足穂が発表した短篇『ココァ山の話』に、そのような一節が出てきます。
稲垣足穂は、「ココァ」と書き、「チョコレット」と書いているのですが。
昭和八年頃、稲垣足穂はココアを召しあがっていたのでしょうか。さあ。
たしかに山ほどのココアがあれば嬉しいかぎりですがね。
ココアがお好きだった作家に、永井荷風がいます。
「巴里の宿屋に朝目をさましシヨコラを啜らうとして起き直る時窓外裏町を角笛吹いて山羊の乳を賣行く女の聲。」
永井荷風は、大正十年に発表した随筆『砂糖』の中に、そのように書いてあります。
これは荷風が巴里遊学中の話ですから、明治四十一年(1908年)のことかと思われます。
少なくとも荷風が当時の巴里でショコラを飲んでいたのは間違いないでしょうね。
これは想像ですが。荷風はココアにミルクを添えたのか。もし、そうだとすると、羊乳だったのか。
羊乳入りのココア、飲んでみたい気にもなってくるのですが。
ショコラから話は飛ぶのですが、シノワ。
「シノワ」chinois は、料理道具のひとつですね。
濾し器のこと。たとえば、ポテトなどを濾して濾して、なめらかにするための器具。
ひとつの例ですが。「ジョエル・ロブション」では、飽きるほどシノワにかけたりするんだとか。口触りをよくするために。
シノワ。今は金属製が多いらしい。
では、どうして「シノワ」なのか。むかしの中国の三角帽子に似ていたので。
昔のシノワには馬の毛が用いられたという。馬の毛は丈夫なので。
馬の毛は、洋服にも使われることがあります。
「バス」。「バス芯」。強く、張りのある芯地。
馬の毛で作られるので、「バス」。馬巣と書くことも。
どなたかバス芯を張った上着を仕立てて頂けませんでしょうか。