クラレットとクラブ・タイ

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クラレットは、ワインのことですよね。
clar et と書いて、「クラレット」と訓みます。もともとは、ボルドオ・ワインを指す言葉なのですが。
イギリス人が「クラレット」と言うとき、そのすべてがボルドオ・ワインであるとは、限りません。仮にボルドオでなくても、赤ワインでさえあれば、「クラレット」と呼ぶこともあります。
また、赤ワイン色のことを「クラレット」と口にすることもあるようですね。
イギリス英語の「クラレット」は、1400年頃から用いられているそうですから、古い。
むかしの日本では、「ぶどう酒」と言ったものです。ワインは皆ぶどうから造られるのですから、「ぶどう酒」に違いありませんが。

「……………酒もぶどうともに五いろ也、長崎よりの到来と仰せらるる也……………。」

神屋宗湛の『宗湛日記』に、そのような記述があります。慶長四年
二月九日のところに出ています。
この日、大坂で茶会があって。茶会の後、それぞれが自慢の品を出した。その中にぶどう酒があった、と。「五いろ」は、五種類のぶどう酒があった、とのことかと思われます。
この茶会には伊達正宗も出ていたそうですから、おそらく伊達正宗もワインを賞味したことでしょう。
慶長四年は、西暦の1599年のことなのですが。
クラレットが出てくる小説に、『情事の終り』があります。1951年に、グレアム・グリーンが発表した物語。

「わたしたちは皿の上の美味しいステーキの半分と、壜のなかのクラレットの三分の一を店に残して……………。」

『情事の終り」の原題は、『ジ・エンド・オブ・ジ・アフェイア』になっています。
これは最初の翻訳では、『愛の終り』だったという。1952年の
田中西二郎訳で。
ところが1959年になって、『情事の終り』と改題されたものです。
1957年に、三島由紀夫が『美徳のよろめき』を発表。この時代に、「よろめき」が流行語になったものであります。
今、用いられている意味での「情事」と「よろめき」とは、ほぼ同じ時代ということになるでしょうか。
いずれにしても、「情事」の一般化が、グレアム・グリーンの『情事の終り」に、端を発していることは、間違いありません。
『情事の終り』の中に。

「サヴェジ氏に関して、最初にわたしの注目をひいたものは、彼のネクタイだった。あれはたしかどこかの同窓会の会員であることを示すものだと思う。」

これは物語の主人公が、探偵に相談に行く場面。その探偵の名前が、
「サヴェジ氏」なのです。
たぶん、「クラブ・タイ」のことでしょうね。
イギリスでのクラブ・タイは、身分証明書にも似ています。クラブ・タイによって、出身校を推理するのは、日常茶飯ですから。
どなたか上質の、厚手の絹地で、本式のクラブ・タイを作って頂けませんでしょうか。

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