ペルシャとベレー帽

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ペルシャは、今のイランのことですよね。でも今なお「ペルシャ絨毯」の名前は生きています。イラン絨毯とは申しません。ペルシャ絨毯は古代から織られていたからでしょう。
ペルシャ絨毯と並んで有名なものが、キャヴィア。イラン、カスピ海沿岸で多くチョウザメが得られるからです。
チョウザメは、古代魚。チョウザメは少なくとも今から二億年前にも生育していたと考えられています。
チョウザメは、巨大魚でもあります。1736年に得られたチョウザメは、九メートル近くもあったという。重さでは軽くて二トンを越えていたんだそうですね。
では、チョウザメはなぜ、巨大魚に成り得るのか。そのひとつの理由は、長寿。百歳を超えるチョウザメも珍しくはないそうです。
長寿魚の卵が、キャヴィア。健康食のひとつであります。少なくとも古代人、中世人はそのように信じていた。古代エジプトの女王もチョウザメやキャヴィアを召しあがったらしい。
十三世紀の英国王、エドワード二世もまたキャヴィアがお好きだった。それというのも、国王はチョウザメを王室に所属するものとのお触れを出しているのですから。このお触れは今なお健在なんだそうです。
ペルシャのキャヴィア。たしかにその通りなのですが、ひとつ問題がないわけではありません。今のイランは禁酒国。アルコールは飲めないことになっているのです。
キャヴィアはたくさんある。でも、ウオトカもシャンパンもなしに、キャヴィアだけを口に運んで佳いものでしょうか。

「ペルシアの測天儀といって、昔はこれで星の高低や角度を測ったものだ。」

『ペルシアの測天儀』に、そのような一節が出てきます。松本清張の短篇です。
これは「高林路子」が、沢田という男からペルシャの測天儀も贈られる場面。もっとも測天儀を模したペンダントなのですが。

1957年に、松本清張が書いたミステリに、『眼の壁が』があります。この中に。

「ベレー帽をかぶった、四十ぐらいの安会社員風の男が、酔って濁った眼をむけた。」

これはとあるバアでの様子として。ここでの「ベレー帽」はたぶん黒のバスク・ベレエなのでしょう。しかし。
松本清張の『眼の壁』には、九十三回、「ベレー帽」が出てくるのですね。九十三回も。
これもまた言葉による「ベレー帽」への偏愛と言えるのではないでしょうか。
実際、どんなベレー帽でも九十三回かぶると絶対に似合ってくるものなのです。
「習うより慣れよ」は、ベレー帽についても言えるでしょう。

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