ブリオッシュとプレス

Jean-Baptiste_Siméon_Chardin_028
Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone

ブリオッシュもまた美味しいものですよね。パンのようであり、スポンジ・ケーキのようであって。

ブリオッシュは十七世紀のフランスにはもうあったんだそうです。そしてブリオッシュにもいろんな言い伝えがあるのだとか。そんな中のひとつに。

そもそものブリオッシュはバターでなく、ブリー・チーズを使った。で、「ブリオッシュ」。その頃、「オッチ」というイチジクの一種があって、形がこれに似ていたので、「ブリオッシュ」になったんだとか。

ブリオッシュがお好きだったのが、ポアロ。アガサ・クリスティが生んだ名探偵。

「ポアロはちょうどブリオシュと熱いチョコレートの朝食を食べ終えたところだった。」

アガサ・クリスティ著『ブラック・コーヒー』にも、そんなふうに出ています。エルキュール・ポアロの朝は、ココアとブリオッシュからはじまることが多かったようですね。でも、どうしてポアロはブリオッシュだったのか。もちろんひとつには、ポアロがベルギー人という設定と関係しているのかも知れませんが。

そして、もうひとつには。アガサ・クリスティは乙女のころに、音楽家を目指していた。で、1905年に一年半、巴里に留学しています。たぶんこの時、ブリオッシュの美味しさに目覚めた可能性はあるでしょうね。

ちょうどその頃。アガサの知合いの男の子に、ジャックがいた。十歳くらいの。

「バラ色のほおをした、金色の髪の男の子で、食べてしまいたいほどかわいい顔をしていた……」

アガサ・クリスティ著『アガサ・クリスティー自伝』の一節。そしてアガサはこのジャックに「ブリオッシュ」のあだ名をつけたという。アガサ自身、ブリオッシュにはそれなりの思い入れがあったんでしょう。

ブリオッシュがお好きだったポアロは、よくプレスの効いたズボンもお好きだった。それというのも、完全なら従僕のジョージはプレスの名人でもあったから。

ズボンのプレスは案外、難しいものです。必ず当て布をして。たっぷりとスプレーで水分を与えて。この水分をすっかり抜き切ることがコツかと。

ブリオッシュをいただきながら、ふわりとそんなことを思っているのですが……。

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone