マッチは、火を点けるための道具ですよね。
よく、西部劇を観ていると。カウボーイがブーツの底でマッチを擦って、火をつける場面がありますね。あれは、「黄燐マッチ」。堅いところで擦ると、火が点くしかけになっています。
あの黄燐マッチは、1830年に、フランスの、ソーリアという人が考案したんだとか。
それより前の、1827年に。イギリスの、ジョン・ウォーカーが、ほぼ現代のものに近いマッチを発明しています。ただ、着火が今ほど簡単ではなかったらしいのですが。
マッチを擦って、火を点ける。このことを研究したのが、伊丹十三。
「僅か十分間の練習ののち、わたくしは、これら諸問題のすべてに通暁し、今や、吹き荒ぶ風の中でマッチをつけることは、わたくしにとって快楽以外のなにものでもない、とすらいえるのです。」
伊丹十三著『ヨーロッパ退屈日記』に、そのように出ています。
伊丹十三は、強風の中で、マッチを点ける方法を考案したと、そのことについて延々と書いてくれているのです。
その要点は、両手を包むようにして、着火点を守ることにあるんだそうですが。
マッチを擦る場面が出てくるミステリに、『雪どけの銃弾』があります。デイナ・スタベノウが、1993年に発表した物語。
「マッチを擦って火をつけ、煙を利用して照星の先端を黒く煤けさせた。」
これは、ロジャー・マカーニフという男の仕種。
『雪どけの銃弾』には、こんな描写も出てきます。
「ライフルのストラップのせいで、新品のマッキノーコートの肩に皺が寄っていた。」
これもまた、ロジャー・マカーニフの様子なのですが。
マッキノオ m ack in aw は、もともと「毛布」の名前だったものです。
カナダで用いられるフランス語の「マッキナック」から出ています。アメリカ英語としては、「マッキノオ・ブランケット」として、1836年頃から使われているようです。
そのマッキノオ・ブランケットで仕立てたコートなので、「マッキノオ・コート」。
ひとつの例として。1903年『アウトルック』紙、11月7日号に。
「彼はマッキノオ・ジャケットを掴んだ」
そんな文章が出てきます。「マッキノオ・ジャケット」のわりあい早い例かも知れません。
マッキノオ・コートを着て。強風の中で、マッチに火が点けられる日は、はたして来るのでしょうか。