樽とディナー・ジャケット

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樽はワインなんかを入れておく器のことですよね。ワインは樽の中でゆっくり眠ることになっています。
樽の中で眠るのはワインだけではなくて。ブランデーの揺り籠もまた、樽。そして、シェリーも。
樽は樫がいいんだそうですね。樫の木を使った樽が。フランスではリムーザンの樫がいちばんだとされるんだそうです。
リムーザンの樫を使って、一本の釘も使わないで、仕上げる。木材だけで。では、箍はどうするのか。箍には栗の木が最上なんだとか。樫の板に、栗の箍。
樽は樽屋が作り、箍は箍屋が作る。樽屋のことを、「トノレージ」 。箍屋のことを、「セルクレーユ」。
セルクレーユは時期になると、森に入って。まず、小屋を作るんですね。この小屋で寝泊まりもし、作業もする。
では、小屋はどうやって拵えるのか。木の枝を集めて。木の枝を曲げて、組んで、ドームみたいにして。この木の枝ドームの上に、カンナ屑をのせる。いっぱい、いっぱいのカンナ屑を。これが屋根になるんですね。
この小屋で作った樫の板に、栗の箍の樽は、永年使って漏れることがありません。もちろんコニャックが眠るための最適の寝床になってくれるわけです。
コニャックが出てくるミステリに、『真冬に来たスパイ』が。マイケル・バー=ゾウハーが、1984年に発表した物語。

「手には琥珀色の液体が半分ほど入った釣り鐘形のグラス二つ持っていて、その一つを、「コニャックです」と……」。

これは主人公のオルロフがコニャックをすすめられる場面。また、こんな描写も。

「下にはビロードのディナー・ジャケット、蝶ネクタイ、礼装用のワイシャツという姿だ。」

これは、SIS長官で貴族の、ナイジェル・サイクスの着こなしなんですね。
いいなあ。ヴェルヴェットのディナー・ジャケット。

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