ホテルとホオズ

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ホテルに一泊するのは、いいものですねえ。なにかの必要があって宿に泊まる、というのではなくて。
無目的に、一泊。無為の刻をひとり過ごすために。携帯電話をはじめ、すべての電子機器の電源を切って。まったくの自由な個人となって、ホテルに一泊。音もなく、風もなく、ほの暗い空間に身を委ねて。なにも考えず、なにも行わず、一泊する。まこと、ホテルは佳いものであります。
日本でわりあい古いホテルは、「築地ホテル」なんだそうですね。 明治元年十一月十九日に開業しています。築地の船坂二丁目に。
築地ホテルの敷地は、7千坪。客室の数、102部屋。一泊、3ドルだったという。つまりは異人向けのホテルであって、日本客は少なかったろうと思われます。
築地ホテルは、ブリッジスの設計。実際にそれを建てたのが、清水屋喜助。今の、清水建設の前身であります。明治はじめの築地は、異人居留地で。三井組ハウスなど多くの西洋館が建てられた。これらの西洋館を進んで手がけたのが、清水屋喜助だったそうですね。
さらに古いことを言いますと、幕末の頃、横濱にはすでに西洋式ホテルがあったそうです。横濱海岸五番にあった、「クラブホテル」。これまた異人専用だったという。
ホテルが出てくる短篇に、『湖の令嬢』があります。 バーナード・マラマッドの名品。

「 ホテル・エクセシオールのプライベートビーチに忍びこんでひと泳ぎした。」

これは、主人公も、ヘンリー・フリーマンの様子。
バーナード・マラマッドが、1958年に発表した物語に、『最後のモヒカン族』があります。この中に。

「膝丈までの黒い毛糸の靴下、さらに通気穴のある先の尖った小さい靴をはいて……………」。

これは主人公の、フィデルマンを訪ねてきた不思議な男の様子。「彼」は、ニッカーボッカーズを穿いているのです。靴はブローグかと思われます。そこに長靴下。つまり、「ホオズ」
hose なのでしょう。
ごくおおざっぱに言って、紳士はホオズを履くことになっています。
ホテルで一泊する時には、やはりホオズを履くべきでしょうね。

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