バターとパントフール

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バターは、牛酪のことですよね。昔は「牛酪」と言ったんだそうです。牛酪に対して、「乾酪」。乾酪はチーズのことだったという。
チーズもバターも原料は牛乳ですからね。バターは、そのまま食べても美味しい。牛乳をそのまま飲むように。
もし、バターをそのまま口にするのが後ろめたいなら、パンに挟んで。黒パンを薄く切りまして、バターをうんと厚く切りまして、挟む。
この一種のサンドイッチは、まことに美味であります。
バターはまた、料理にもよく用いられるものです。たとえば、オムレツだとか。たっぷりの溶かしバターで仕上げたオムレツは、こたえられません。

「それから、卓子の上のバタ入れを取り上げ、懐から手拭を出して、その折り畳んだ間に、氷で冷やして固めてあるバタの丸い玉を、みんな包み込んでしまつた。」

昭和九年に、内田百間が発表した随筆『續立腹帖』に、そんな一節が出てきます。
これはあるレストランでの見聞記として。お年寄りが食堂で「定食」の意味がよく分からなくて。次から次へと皿が出てくるのに、「立腹」。そんな内容になっているのですが。

「………サリズベリ・ステーキとバタライスにスチュウ・コーン。冷コーヒーに、ロイヤル・プディング。」

『古川ロッパ昭和日記』にそのように出ています。昭和十五年五月十九日(日曜日)のお昼の食事として。
ステーキにバターライスは、なんとなく付き物という印象でもありますが。

「大きな、粒の揃ったみごとな蛤で、バターいためにしたらさぞ美味かろうと思い………」

1960年に、山本周五郎が発表した小説『青べか物語』に、そのような文章が出てきます。
たしかに蛤のバター炒め、うまいものですよね。

バターが出てくる小説に、『幻滅』があります。フランスの文豪、オノレ・ド・バルザックが、1843年に書いた長篇。

「ベレニス! 牡蠣とレモン、フレッシュバターとシャンパンを持ってきて」

これは「コラリー」が、これから食事をする場面なんですね。
また、『幻滅』には、こんな描写も出てきます。

「グレーの柔らかな生地のコートに身を包み、先の細いズボンをはき、医者か公証人かと見まがうような赤いスリッパを履いていた。」

これは「プロラール」服装として。
「スリッパ」。フランスなら、「パントフール」pantoufle でしょうか。「上履き」。
どなたか深紅のパントフールを作って頂けませんでしょうか。

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