ハルビンとハンカチ

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ハルビンは、中国、黒竜江省の町ですよね。中国ではありますが、ロシアともなにかと関係の深い所なんだそうです。
古い話ですが。以前、「満州」と呼ばれた時代も。昭和四年にハルビンを旅したのが、劉生。画家の、岸田劉生。
その頃、満鉄の社員だった、松方三郎の招きによって。大連、奉天、ハルビンを訪れています。岸田劉生にとってはこれが最初で最後の海岸旅行になった。ご本人はほんとうはパリに行きたかった。「フランス人に絵の描き方を教えたい」と。
戦前のハルビン、秋林に。「秋林洋行」という名の、素晴らしい英国物を置いてある洋品店があったという。
秋林にはまた、小さな居酒屋があって。この店で出すボルシチが絶品だった、と。

「ここのボルシチがひどくおいしくて、それがたべたいばかりに、休日に、往復四里の道を遠しとせずに通った。」

池田弥三郎著『私の食物誌』には、そんなふうに出ています。ボルシチ、寒い時には、美味しいものですよね。ボルシチが出てくる小説に、『細雪』が。もちろん、谷崎潤一郎の名作。

「黒いパンと、チーズと、バタと、「ボルシュ」と称する……」。

この「ボルシュ」はたぶんボルシチのことなんでしょう。 『細雪』にはあるロシア人が出てくるので、それでボルシチなんですね。また、こんな描写も。

「妙子のポケットからハンカチと一緒にライタアが転げ出したのを見て……」。

つまり女性用のハンカチなんでしょう。女性用のハンカチはたいてい少し小ぶりで。上着の胸ポケットに入れるにも、ちょうどよい大きさで。
さて。胸ポケットにハンカチを挿して。ボルシチを食べに行くとしましょうか。

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