ニューヨークはいつもわくわくさせられる街ですよね。街の中の街、そんな風にも言えるでしょう。
もともと英國に「ヨーク」という街があって。そのアメリカ版なので、「ニューヨーク」。土地の様子が似ていたとか、ヨーク出身の人がいたとか。そんなことがあったのかも知れませんが。
ヨークはイングランドの北、ノース・ヨーク郡にある地名なんだそうですね。「ニューヨーク」は一例で、アメリカの場合、「ニュー」と頭につく地名は、たいてい英國に「先輩」がいたりすることが多いようです。
ニューヨークにはニューヨーク弁があって。それはまあ、東京に東京弁があるようなものなんでしょうね。でも、「ニューヨーク弁」にはかすかな抵抗があって。「ニューヨーク訛り」でも変だし、「ニューヨーク言葉」でもちょっと硬いし。どなたかいい表現をお教え下さいませんか。
それはともかく、ニューヨークにはニューヨークの話方があって。サリンジャーの『大工よ、屋根の梁を高く上げよ』にも出てきます。
「彼女の言葉にはとてもきれいなニューヨーク訛りがある、ダイクマン・ストリートの訛りなんですね、それで出てもらいたかったんです」
「彼女」は、シャーロットという設定になっています。うーん、なるほど。細かい。ダイクマン・ストリートは、マンハッタンの北側。リヴァサイド・ドライヴにも近くて。でも、ダイクマン・ストリート弁というのがあるんですねえ。
もっともこの小説を、J・D・サリンジャーは、「サリンジャー弁」で書いたわけでありますが。よく知られているように『大工よ、屋根の梁を高く上げよ』は、連作短篇のひとつになったいます。もうひとつの連作短篇が、『シーモアー 序章ー』なんですね。この中に。
「壁にはピカソの絵が掛かり、当人はノーフォーク・ジャケットを着ている。」
これは特に誰が、というのではなくて、ひとつの類型としての描写なのですが。
ノーフォークも英國の地名にあります。イングランド中部の、ノーフォーク郡として。
さて、ノーフォーク・ジャケットを着ましょう。もっともピカソの絵はありませんがね。ノーフォーク・ジャケットで、ニューヨークに行く夢を見ましょうか。