印税とイリデサン

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone

印税は、著作についての言葉ですよね。一冊の本を書きますと、著者に印税が支払われます。
自動車税、固定資産税………………。税はたいてい頭の痛いものですが、「印税」ばかりは頂けるほうの税なんですね。
たとえば、一冊、千円の本を書いて、百万部ほど売れますと、書いた人にはわずかに一億円の印税となるわけです。「わずかに」と申しますのも、出版社には10億の収入がもたらされるのですから。
日本での印税は、まず例外なく一割となっています。アメリカ、イギリスなどには、専門のリテラリー・エージェンシーがあります。著者に代って、印税の交渉をしてくれる。ですから、必ずしも一割と決まっているわけでもありません。
印税が出てくる随筆に、『芥川の事ども』があります。昭和二年に、菊池 寛が書いています。

「芥川としてはその労の十分の一の報酬も得られなかった位である。」

「芥川」が、芥川龍之介であるのは、いうまでもありません。芥川龍之介と菊池 寛とは親友でありましたから。
ある時、芥川龍之介が中心になって「文藝読本」を編纂したことが。ところがまわりの者は事情を知らないままに、芥川はあの印税で書斎を建てた」などと噂を。
菊池 寛はほんとうのところを知る立場にあったので、芥川を弁護した内容になっています。もっとも、その時には芥川龍之介はすでに世を去っていたわけですが。
菊池 寛が、大正七年に書いた短篇に、『大島が出来る話』があります。この中に。

「手際よく結ばれた玉虫色のネクタイが、此の男の調った服装の中心を成して居た。」
これは「岡村君」と呼ばれる人物の着こなし。
玉虫色。フランス語なら、「イリデサン」 ir id esc ent でしょうか。これはギリシア語で虹を表す「イリス」から来ているんだとか。
イリデサンのネクタイを結んで、印税の夢でも見るとしましょうか。

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone