パンケーキとバラシア

パンケーキは、ホットケーキのことですよね。
ふつうフライパンで焼くので、「パンケーキ」。
パンケーキは、英語。ホットケーキは、日本語。
ホットケーキはおやつにもなり、また朝ごはんにもなるものですね。
私が自分で焼くときは、大きな一枚のホットケーキに仕上げます。
オリイヴ・オイルを少し。さらにメイプル・シロップを垂らして頂きます。
「この世の天国」。思わず笑みがこぼれる。ホットケーキは、平和な味です。このホットケーキの側に欲しいのは、ミルク・ティー。
ホットケーキが出てくる小説に、『ある日本宿』があります。
昭和五年に、正宗白鳥が発表した短篇。
正宗白鳥は昭和三年に、アメリカに旅しているのですが。たぶん、その時の印象が下敷きになっているでしょう。

「それで湖邉へ向ふことは断念して、近所のカツフェーへ寄つて、ホツトケーキを喰ひながら、出入りの客を観てゐた。」

これはシカゴでの見聞として。
ほんとうはミシガン湖を観に行く予定だったものの、雪が強くて予定を変更した時様子として。
辺見 庸が、平成七年に発表した短篇に、『ホットケーキ』があります。

「円盤の三段重ね。最上段真ん中のバターのかたまりがジュージューと音を立てて溶けるほど熱くキツネ色に焼けていて、フォークを通すと信じられないほど柔らかな生地が盛大に白い湯気を上げるのだった。」

これは喫茶店「フラミンゴ」で、主人公が食べるホットケーキなんですね。
パンケーキが出てくる小説に、『爆撃機』があります。
英国の作家、レン・デイトンが、1970年に発表した長篇。

「バタースビーはやっとパンケーキを一つと蜂蜜をひとすくい食べ終ったばかりのところだった。」

これはテッド・バタースビーが、朝食を食べている場面。
たしかにホットケーキに蜂蜜を添えることも少なくありませんね。
また、『爆撃機』にはこんな描写も出てきます。

「マンローは勤務中はとくに誂えたバラシア製の軍服と手作りの靴以外は絶対に身につけたことがなく、」

これはジョン・マンローという紳士の着こなし。
「バラシア」barathea 絹と毛の交織地。かなり厚手。緻密で、深い光沢のある生地。
ひと昔前の日本では、よく礼服が仕立てられたものです。
どなたかバラシアのスリーピース・スーツを仕立てて頂けませんでしょうか。