テーブルとティロリアン・ハット

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テーブルは、西洋机のことですよね。日本には日本の座卓があります。要するに、椅子を必要とするかしないかの、違いなのですが。
table  と書いて、「テーブル」と訓みます。これを常に「テイブル」とお書きになったお方に、菊池 光がいます。優れた日本語翻訳者。
なにかの翻訳本を読んでいて、もし「テイブル」とあったなら、菊池 光訳だなあと、思ってしまうほどでした。

テーブルが出てくる物語に、『思出の記』があります。徳冨蘆花の小説。

「………大きなコップに桔梗撫子をつかみ挿しにしたのが、卓布の雪に色添えて、まず眼ざむるばかり。」

徳冨蘆花は、「卓布」と書いて、「テエブルクロス」のルビをふってあります。
これは「僕」が友人宅に招かれた時の様子として。はじめに小鯛の吸い物が出て、次に鰹の刺身………。
ここでの食事中の話題に、ビスマルクのオムレツがあったという。ビスマルクは大のオムレツ好きで。一度に50個の卵を使ったオムレツを平らげたそうです。まあ、たしかにテーブル・マナーのひとつに、食事中の話題を入れてもいいのかも知れませんね。

テーブルが出てくる小説に、『鳩の翼』があります。1906年に、ヘンリー・ジェイムズが発表した物語。

「………テーブル越しに交される言葉の、ことに名前の響きや、フォークのかたちや、花の生け方や、召使いたちの態度や、部屋の壁さえ………」

これは「ミリー」が招待された食事中の様子として。
また、ヘンリー・ジェイムズの『鳩の翼』を読んでおりますと、こんな描写も出てきます。

「………なぜか非常に家庭的で「立派な」チロル風のフェルト帽子を、彼女は相変わらず真っ直ぐにしっかりと、かぶっていた。」

これは「スーザン」の帽子として。場所は、アメリカのボストン。
1900年代のボストンで、ティロリアン・ハットが流行だったことが窺えるでしょう。
ただし、ここでのティロリアン・ハットは、本来の民族帽に近い、鍔広の帽子だったと思われます。
どなたかワイド・ブリムのティロリアン・ハットを作って頂けませんでしょうか。

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