スークとスカーレット

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スークは、市場のことですよね。souq と書いて「スーク」と訓むんだそうですが。
ヨオロッパを歩く愉しみのひとつに、市場があります。時間と場所が決められていて、生鮮食料や、雑貨など並べられるものです。
チーズやハムやバター。たいていの場合、生産者が直接に売りに来ていたり。つまり、生産者の顔を見ながら、買い物が出来たりするわけですね。
ヨオロッパの市場で感心するのは、後かたずけ。市が終わると、何事もなかったかのように、きれいさっぱり。ほんとうに今の今まで、市が開いていたのか、不思議に思えてくるほどです。

市場が出てくる小説に、『善財』があります。石川 淳が、昭和二十四年に発表した短篇。昭和二十四年頃の日本がどんなふうだったかを識る上でも貴重な物語であるかも知れません。

「………さして廣くもない市場の中を何度まはつてみても、酒類などを売つてゐさうな店は見あたらず………」

これは主人公の「宗吉」が、新橋駅前の市場をのぞいている場面。
また、『善財』にはこんな文章も出てきます。

「鹽豚にバタ、鹽豚は自家製のもの、バタは三里塚牧場の産で………」

これは当時の芝浦の待合での食事の様子として。
宗吉は自分のリュックサックから、食料を取り出しているのです。
時は、昭和二十二年。宗吉は船で芝浦に着いたばかりという設定になっています。千葉の港から船に乗って、東京にやって来たわけですね。

スークが出てくる小説に、『ウウィーン五月の夜』があります。1996年に、レオ・ぺルッツが発表した物語。

「鍛冶屋小路は市場の外側、つまり喧騒と買い物客でごった返している巨大なバザールを抜けたところにある。」

日本語訳では、「市場」と書いて、「スーク」のルビがふってあります。
レオ・ぺルッツの『ウィーン五月の夜』を読んでおりますと、こんな描写も出てきます。

「緋色の上着、黒いズボンで、派手なネッカチーフをしていた。」

これは、エロー・ド・セシェルという人物の着こなしについて。ここでの緋色は、スカーレットでしょうか。深紅であり、真紅であり。
どなたかスカーレットの上着を仕立てて頂けませんでしょうか。

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