フォアグラは美味しいものですよね。
フォアグラは美味の代名詞ともいえるでしょう。フォアグラについて、こんな話があります。
1780年ころ、フランスで。その頃、ストラスブールに、コンタード侯爵というお方がいらして。すこぶるつきの、美食家。このコンタード侯爵が雇ったのが、ジャン・ピエール・クルーズ。腕の立つ料理人。ある時、コンタード侯爵は、ジャン・クルーズを呼んで。
「今度の宴では、フランス一の、料理を作ってもらいたい」。
そうおっしゃった。
フランス一……。言うのはいと易しいことですが。ジャン・クルーズは考えに考えた。その結果。フォアグラをパイで包んで焼くことに。
このパイ包みのフォアグラが食通たちに好評で。コンタード侯爵は、ルイ十六世に献上したという。
ルイ十六世は、パイ包みのフォアグラに、感動。で、コンタードは国王から、ピカルディ地方を賜ったそうです。この料理は今も、「コンタード風パイ」として、遺っています。
フォアグラが出てくる小説に、『人間の絆』が。1915年に、サマセット・モオムが発表した物語。このなかに。
「二人とも、一方は、ウイスキー壜を、もう一方は、鵞鳥の肝臓パイ ( パテ・ド・フォア・グラ ) をもって、やってきた。」
物語の主人公、フィリップがロンドンに部屋を持つ。その部屋に友人を招く場面。フォアグラにウイスキー。英国的ですね。
この一節のすぐ前に、彼らの服装が出てきます。
「ローソンは、今では年中たいていロンドン住いで、そのためか、すっかり環境に適応してしまい髪も短く剪れば、服も、小ざっぱりとしたサージ服に、山高帽などかぶっていた。」
サージ serge は古い時代のイタリアにはじまり素材。「絹」を意味する「セリカ」 serica からきた言葉なんだそうですね。