鮭は、サーモンのことですよね。
スモークトサーモンもよく口にするものです。サンドイッチにはさんであったり。
あるいはまた、「サーモン・ピンク」だとか。英国人の典型的な顔の色は、サーモン・ピンクとの説があります。
鮭は世界中で愛されている食材。第一、食べて美味しい。身体にとっても健康的。そんな印象があります。
しかも、サーモンは捨てるところのない魚。
昔、北海道では鮭の骨を食べたという。骨を煮込んで煮込んで、さらに包丁で細かく切って。
古代の古墳を開いても鮭の骨は出てこない。それは骨まで食べたからだと、考えられています。
骨を食べるくらいですから、頭も当然のごとく。鮭の頭を薄く薄く削って、「氷頭なます」に。
氷頭なますに辛口の酒。終りがなくなってしまいますね。
鮭に酒はよく合うもの。
イクラが珍味であるのは、言うまでもないでしょう。珍味というなら「メフン」も忘れてはなりません。
メフンは鮭の背腸(せわた)。ほんの少ししかありませんから、貴重品。これを塩辛にして頂くのは、最高の美食。
むかし北海道では、「こ皮煮」を食べたんだそうですね。鮭の皮の料理なので、「こ皮煮」。
鮭の皮を包丁の背で叩いて叩いて。それを細かく刻んでおいて。さらに擂り鉢で、擂る。これに長芋などを合わせたのが、「こ皮煮」なんだそうです。
鮭が出てくる随筆に、『鮭苺の入江』があります。
大庭みな子が1989年に発表したアラスカの想い出。
アラスカには、「サーモンベリー・ベイ」という地名があるとのことで、『サーモンベリー・ベイ』の題になっているわけです。
「香辛料やチーズはイタリア風であったが、魚肉は土地の海で採れた鰊や鮭を北国風に塩漬けにしたり、燻製にしたものが使ってあり、」
これは友人のニーナが作ってくれたピッツアのこと。
時は1950年代で、大庭みな子にとってはじめてのピッツアだったとも。
鮭が出てくる小説に、『ランチ』があります。英国の作家、サマセット・モオムの短篇。名品です。
「ハイ、立派な鮭がちょうど着いたところでございます。」
これはレストランのウエイターの言葉として。
昔の巴里の高級レストラン「フワヨー亭」で。
物語の主人公は二十年ぶりに古いマダムに会って、ランチを共に。マダムは鮭が食べたいというので。
苦労人のモオムのことですから、最後に意外な結末が待っているのですが。
『ランチ』とほぼ同じ時期にモオムが書いた短篇に、
『四人のオランダ人』があります。この中に。
「てらてらした顔を更紗染めの大きいハンカチで拭いて、しゅろの葉のうちわをバタバタ使っていた。」
これは「私」がポーカーをする相手の様子として。
場所は当時のジャワの「ヴァンドース・ホテル」になっているのですが。
ということはおそらく「ジャワ更紗」なのでしょう。
ジャワ更紗の特徴は、生地にろうを使うこと。ろうけつ染め。ろうで、染める位置と染めない位置を決めるので。
つまりは、バティック・プリントであります。
どなたか更紗の上着を仕立てて頂けませんでしょうか。