シャンパンは誰にも人気の高いものですよね。ところが。「シャンパンなんぞ、男の飲む酒じゃねえ!」という科白があるらしい。1920年の演劇、『商戦テナシティ』の中に出てくるんだとか。『商船テナシティ』は、後に映画化もされているのですが。
では、『商船テナシティ』にシャンパンが出てこないのか。いえいえ、そうではあります。劇中の、バスティアンが、テレーズにお近づき願う場面で、シャンパンを開ける。つまり1920年頃には、女性と親しくなるためも潤滑油のように思われていたのでしょうか。
獅子文六が昭和十二年に、『舶来雑貨店』を出しています。この中に、シャンパンの話が出てきます。それによりますと。
第一次大戦前。巴里の洒落者の朝食は、シャンパン付きだったと、書いています。朝、シャンパンの小壜に、極上のフォアグラ。あとはパンにバターだけ。まあ、いつの時代にも粋を気取るのはご苦労なことでありますねえ。
ざっと百年後の日本で気取ろうとも思いませんが。ひとつだけ知っているのは、「ソオ」 s e a u 。単に、「桶」なのですが。あのシャンパンを冷やしておくための「桶」も、ソオで通じるんだそうですね。
シャンパンの他に獅子文六がお好きだったのが、ゴルフ。獅子文六は那須のあるゴルフ倶楽部の会員になっていて、七十になった時、倶楽部から赤いジレを頂いた。これはその倶楽部の決まりなんだとか。
「なかなかいい色の赤であり、クラブの紋章が、金文字で入っているところに、威儀さえ、備わっている。」
と、書いています。さて、皆さん、どうでしょう。人間、七十になったら、金文字の入った、いい赤の、ジレを着ることに致しませんか。