エナメルとエメラルド

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エナメルは、パテント・レザーのことですよね。よく、ご婦人のバッグなどにも使われます。
男の場合には、舞踏靴にエナメル・レザーが用いられることになっています。
でも、どうして「パテント・レザー」なのか。これはもともと「特許を得た革」だったから。
1820年に。アメリカ、ニュウジャージー州、ニュウアークの、セス・ボイドが特許を得ています。セス・ボイドは、鞣し革職人で、1819年に、革の表面にニスを塗る製法を思いついています。1820年には、十六枚の、ニス塗り革を製品化しています。
「パテント・レザー」の言葉が使われはじめるのは、1820年代のことでしょう。1829年『アメリカン・アドヴァタイザー』7月29日号に、「ジャパンド・パテント・レザー」と出ています。
ここでの「ジャパンド」は、「漆塗り」のこと。実際に日本の漆塗りであったかどうかはさておき、その時代のアメリカ人には漆塗りに似た革と思えたのでしょう。
1840年代のアメリカには、すでに「パテント・レザー・シューズ」が流行りにもなっていたらしい。
では、どうして、パテント・レザー・シューズなのか。それは、シュー・ポリッシュを使わなくてすむから。靴墨不要靴。舞踏の際に、相手の女性のドレスの裾を汚す心配がないからなのですね。
パテント・レザー・シューズが出てくるミステリに、『髑髏城』があります。

「かれの黒エナメルの靴が、動きもせずにおおい布の下に横たわっているのを見た最後の場面まで……………………。」

『髑髏城」は、1931年に、ディクスン・カーが発表した物語。
文中、「かれ」とあるのは、ベルギーの大富豪、ジェローム・ドオネイという設定になっています。大富豪は、いつでもエナメルの靴なのでしょうか。
また、『髑髏城』には、こんな描写も出てきます。

「ワイシャツのそで口に、エメラルドのカフスボタンがきらきら光っていた………………………」。

これは、フランス人の、エミール・ルヴァセールの着こなし。エメラルドのカフ・リンクス。憧れですねえ。
でも、エメラルドのカフ・リンクスに合うスーツから仕立てなくてはなりませんが。

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