ババとバレージュ

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ババは、菓子のひとつですよね。baba と書いて「ババ」と訓みます。
丸い、やわらかいケエキです。ババの特徴はなんと言ってもラム酒に漬けてあることでしょう。そのために正しくは、「ババ・オ・ロム」と呼ばれるわけですね。ラム酒漬けのババ。
以前の巴里では、専門店でババを買うと、直前におまけで、ラムをかけてくれることもあったんだとか。
今でもババにラムのスポイトを挿したものがあります。たぶん、ラムのサーヴィスの名残りなのでしょう。
ババの歴史は、十八世紀に遡るとのことです。アルザスの、「ヴィサンブール」という町で。当時の、スタニラス・レグザンスキイ大公が好んだ菓子だったとか。
その時代に、ポーランドの菓子に、「バブカ」というのがあって。このバブカにたっぷりとラムをふりかけて、今のババが誕生したという。
もっとも、そもそもの酒はラムではなくて、ハンガリーのトカイ・ワインだったとの説もあります。
その頃、ちょうどレグザンスキイ大公は、『千夜一夜物語』を愛読中で、『アリババと四十人の盗賊』から、「ババ」の名前を思いついたらしい。
このレグザンスキイ大公の姫が、マリイ・レザンスカ。ルイ十五世に嫁いでお妃となったお方。父君の薫陶を受けて菓子づくりが得意。ルイ十五世がよそ見しないように、毎日、美味しい菓子をたくさん作ったとのことです。

ババが出てくる小説に、『失われた時を求めて』があります。言うまでもなく、フランスの作家、マルセル・プルーストの代表作。

「紐をかけて包みにした、プレジールや、ババや、大麦飴などである。大公妃は私に「あとで召しあがれ、お祖母さまにもあなたからさしあげてくださいな」と言って」

「プレジール」は円錐形の焼菓子。「大麦飴」は、大麦の煮汁を棒状に固めた飴のこと。

また、『失われた時を求めて』には、こんな描写も出てきます。

「アメリカの国旗を掲げたヨットに乗る若い夫人がバレージュ織りやローンのワンピースを着ているのを見たりすると」

「バレージュ」barége は、薄い、平織りのウール地。ただし、十九世紀にはウールとシルクとを混ぜて織ることもあったんだとか。
バレージュBarége は、もともとピレネー山脈に近い村の名前。ここではじまった織り方なので、「バレージュ」。
どなたかバレージュのスーツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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