ターブルは、机のことですよね。
table と書いて「ターブル」と訓みます。
これが英語になりますと、「テーブル」になるわけです。
英語の「テーブル」はラテン語の「ターブラ」tabula
と関係があるらしい。ターブラは、「板」の意味があって。板は板なのでしょうが、脚付きの板だったのでしょう。
英語には「テーブルを返す」の言い方があるんだとか。
「トゥ・ターン・ザ・テイブル」。これは「形勢逆転」の意味。たとえばチェスなんかでも、盤を逆さまにすると、まったく展開が違ってきますからね。
「主従の一群を机台に居ならびながら洋酒の「フラスコ」(徳利)「コツプ」(酒盛)をめぐらして、」
明治三年に、仮名垣魯文が発表した『西洋道中膝栗毛』の中に、そんな一節が出てきます。
これはアレキサンドリアのホテルでの様子として。仮名垣魯文は「机台」と書いて、「ていぶる」のルビを添えているのですが。
小説にあらわれる「テーブル」としては、かなりはやい一例ではないでしょうか。
この時期に仮名垣魯文が異国に旅した形跡はありません。すべて想像の産物なのです。
よくもまあ、空想だけで書けたものですね。
「カアテンやテイブルセンタアとか、童話趣味の装飾も彼女らしい好みであつたが、」
昭和十年に、徳田秋聲が発表した『仮装人物』には、そのような文章が出てきます。
これは「葉子」に家に、「庸三」が訪れた時の印象として。
昭和のはじめには、テーブル・センターなどもごくふつうに用いられていたものと思われます。
また、『仮装人物』を読んでおりますと。
「いつか先生のところに、まつ屋の浴衣があつたでせう。あれ何うなすつて?私一反ほしいわ。」
これは葉子から庸三への問いかけとして。
この時代には店が画家と共同して、独自の浴衣地を売り出すことがあったようですね。
ターブルが出てくる小説に、『ラブィユーズ』があります。
1841年に、フランスの作家、オノレ・ド・バルザックが発表した長篇。こんな会話が出てきます。
「せっかくの招待だが、受けるわけにはゆかない。母さんの面倒を見なくちゃならないのだから。ぼくは定食レストランで食事する。」
これは「フィリップ」に誘われた「ジョセフ」の断り文句として。
「定食レストラン」。原文では「ターブル・ドット」になっています。主に、定食を出すレストランのこと。
日本なら「一膳飯屋」に近いのでしょうか。
また、『ラブィユーズ』には、こんな描写も出てきます。
「フィリップは筋の入ったタフタ織りの目庇をかぶっていた。」
「タフタ」taffetas は、「琥珀織」のこと。
英語としては、1355年頃から用いられているとのこと。
トルコ語の「タフタ」tafta が語源であるという。その意味は、「織る」だったそうですが。
どなたかタフタのシャツを仕立てて頂けませんでしょうか。