島にはなぜか夢がありますよね。無人島となればなおさらのことでしょう。
無人島は絶海の孤島という感じがあるんですが。この広い世の中には、歩いて行かれる無人島があるんですってね。
歩いて行かれる無人島。不思議なんですが。それは、知林ケ島( ちりんがしま) 。
九州、鹿児島、指宿市にある無人島。どうして歩いて行かれる無人島なのか。引き潮になると砂州があらわれて。この砂州ができているときなら、歩いて行かれるんですね。
本土から二十分ほど歩くと、知林ケ島へ。昔、知林ケ島には松林があって。近くを大きな船が通ると、風に揺れてちりんちりんと鳴る。それで、知林ケ島になったんだとか。
知林ケ島には燈台がひとつあって。それ以外は手つかずの自然が残っているという。周囲3キロほどの小さな、無人島。キャンプもできるんだそうですよ。
島の魅力を語った小説に、『海流の中の島々』が。もちろん、ヘミングウェイの長篇。
「真っ白な粉を思わせる白砂の上に緑の光が映るだけで、大きな魚は浜に寄るずっと前から影となって見えるのだ。」
これは書きはじめのあたり。ヘミングウェイ自身が好きだったビミニ島の昼間の光景なんですね。
『海流の中の島々』は、長く忘れられていた小説。ヘミングウェイの没後、偶然に原稿の形で発見されたもの。主人公のトマス・ハドソンは画家という設定。でも、誰が読んでも、ヘミングウェイ自身がモデルなんですが。読むと必ずビミニ島に行きたくなってしまう物語です。
『海流の中の島々』が世に出たのは、1970年。1970年に発表されたミステリに、『サボイ・ホテルの殺人』が。マイ・シュヴァル、ペール・ヴァーレ 共著の小説。
「立ちあがったのは、ダーク・ブルーのシルクのスーツに身をつつんだ、初老に近い長身の男だった。」
これはスウェーデン財閥の、ヴィクトール・パルムグレインの姿。そこに結んでいるのは、フランス製のタイ。
スーツとは限らず。なにか絹のシャツを着て。島に旅したいものですが……。