ハンマーは、槌のことですよね。
「木槌」というではありませんか。
もし、これが金属製だと「金鎚」になるのでしょう。
大きな槌もあれば、小さな槌も。昔話に出てくるのが、
「打出の小槌」。打出の小槌を振れば、なんでも思い通りのものが出てくることになっています。
子槌が出てくる小説に、『わかれ道』があります。
樋口一葉が、明治二十九年に発表した物語。
「私の家の洗ひかへしを光澤出しの小槌に、碪うちにでも遣りに来て下され、夫れならお前さんも人に憎まれず私の方でも大助かり、」
これは「お京」が、「吉三」に対しての言葉として。
お京は二十歳ばかり。吉三は、十六という設定になっています。
吉三は町内の厄介者。そんななかで、ただひとり、お京が弟でもあるかのように目をかけて。
ここでの「小槌」は、碪を打つための道具。織あげた着物地は、碪を打つことで、光沢を出したものなのですね。
物語の中心は、十二月三十日の夜。
姉のように慕ってきたお京がいよいよ妾になる日。
その噂を聞いた吉三がお京にたしかめに行く場面。
「お京さん、後生だから此肩から手を放しておくんない。」
これが最後の一行。
うーん。何度読んでも涙がこぼれます。
ただ、ここにひとつの不思議があります。
樋口一葉はこの名作をわずか二日で仕上げているのですね。
やはり天才はいるものなんでしょう。
えーと、ハンマーの話でしたね。
ハンマーが出てくる小説に、『イナゴの大移動』があります。
英国の作家、デイヴィッド・ガーネットが、1931年に発表した物語。
「ドライバー、ハンマー、ジャックナイフ、スパナと工具を使い分けて、解体作業を進めるうち、地面に落ちる影が長く伸びはじめて、」
これは墜落した小型飛行機を分解している場面。
また、デイヴィッド・ガーネットが、1935年に発表した物語に、『ビーニー・アイ』があります。この中に。
「父は厚手の下着と靴下を取り揃え、上着はダブルのパイロット・コートを見立てた。」
これは物語の主人公が、カナダ、ケヴェックに行くための用意として。
「パイロット・コート」は、実は、ピー・ジャケットの別名でもあります。
どなたかパイロット・コートを仕立てて頂けませんでしょうか。