ティーチャーは、先生のことですよね。
ティーチャーは教師のことでもあります。
「ティーチ」teach が「教える」ですから、ティーチャーが「教え人」の意味になるのは、当然でしょう。
「先生と呼ぶのと、呼ばれるのは雲泥の差だ。何だか足の裏がむずヾする。」
夏目漱石の『坊っちゃん』に、そのような一節が出てきます。
これははじめて松山で教壇に立った時の気持として。
まあ、そんなこともあったのかも知れませんが。
でも、夏目漱石ほど「先生」が似合うお方もいません。
とにかく芥川龍之介の先生だったお方ですからね。
夏目漱石を「先生」と読んだひとりに、内田百間がいます。
「本書が偉大なる漱石先生の一斑を知らしめ、ひいては原作の鑑賞、研究に入る一つの手引草とならん事は編者の念願である。」
昭和十一年に、『夏目漱石讀本』が、三笠書房から出た時の「序」に、内田百間はそのように書いています。
内田百間は昭和四十一年四月二十日に、世を去って。
八十一歳でありました。
告別式は、四月二十四日。
この日、うなぎの「秋本」から立派なお重が届いた。
「どうぞお棺にお納め下さい」
ある時、内田百間は三十日の間、毎日欠かさず「秋本」のうな重を食べた。
たぶんそのことと関係してのことでしょう。
ティーチャーが出てくる小説に、『ランポール弁護に立つ』があります。
英国の作家、ジョン・モーティマーが、1978年に発表した物語。
「カウンターの向こうに回り込むが早いか、ウイスキーのティーチャーズをダブルい注ぎ、またたく間に飲み干した。」
そういえばウイスキイの銘柄にも、「ティーチャーズ」がありますね。
1830年に、スコットランドのウイリアム・ティーチャーズがはじめたので、その名前があります。
『ランポール弁護に立つ』を読んでおりますと、こんな科白も出てきます。
「だいたいあの判事は、自分のことを何様だと思っておるのだ? 『テイラー・アンド・カッター』誌の司法部通信員ってところがせいぜいじゃないか? 」
これは物語の主人公、ラポールの言葉として。
『テイラー・アンド・カッター』は、以前、ロンドンで発行されていた洋服店専門誌。
1860年代からざっと百年の間出版されていた専門誌。
今となっては貴重この上もない資料です。
どなたか『テイラー・アンド・カッター』を復刻して頂けませんでしょうか。