クレオパトラは、お美しいお方だったんだそうですね。
ところで、クレオパトラどんなものを召し上がっていたのか。
たとえば、紀元前40年に。クレオパトラは、アントニウスを食事に招いています。アントニウスの副官が、その食事の内容をローマに報告しているんですね。
「まず、魚、牡蠣、ムラサキガイ、アスパラガスを添えたイルカなど五、六品。それからチキン・パイ、魚か鹿肉のパテ、各種各様な海の幸、香辛料の効いたソースで味つけしたエビやイソギンチャク、ヤマウズラ、鹿やガゼルのカツレツ、甘皮に包まれたキジ、オオナガムシクイ鳥のウズラを詰めた仔豚、火であぶりみごとな羽をあしらったアヒル、クジャク……」。
以下えんえんと続くんですが。日本でも昔は、孔雀を食べることもあったらしい。イソギンチャクは今でも地方によっては、食べますよね。九州、有明海の近くで。もしも献立表に「ワケノシンノス」とあったなら、それはイソギンチャク。
クレオパトラの時代にはまだ、キッシュはなかったんでしょうか。「キッシュ・ロレーヌ」。もちろん、ロレーヌのキッシュの意味。
キッシュ・ロレーヌ quiche Lorraine は、中にベーコンやほうれん草が。キッシュは、ドイツ語の「クーヘン」kuchen からきているとも。キッシュ・ロレーヌが出てくるミステリに、『死者を鞭打て』が。1972年に、ギャビン・ライアルが発表した物語。
「自家製ロレーヌふうキッシュ……」。
たぶん、キッシュ・ロレーヌのことなんでしょう。主人公の、ジェイムズ・カードが、あるところでご馳走になる場面なんですね。また、こんな描写も。
「彼は、厚い、ダブルの淡黄褐色のオーバーを着込んでいたし ーー 昔の軍隊で"厚地短外套 (ブリティッシュウォーム ) と呼ばれていたものだ。」
これは、ウィリー・ウィンスローという富豪の姿。
さて、ブリティッシュ・ウォームを羽織って。現代のクレオパトラを探しに行くとしましょうか。