クリスティーヌとグレージュ

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クリスティーヌは、女の人の名前ですよね。でも、「クリスティーヌ」の名前を耳にすると、絶世の美人を想像してしまうのは、なぜなのでしょう。
それはたぶん、『オペラ座の怪人』のせいではないでしょうか。もちろん、ガストン・ルルーの代表作。1910年に発表されて話題となった物語。
ガストン・ルルーは多作の人でもあって、たくさん小説を書いています。が、今読まれるのは、『オペラ座の怪人』か、そうでなければ、『黄色い部屋の秘密』。それ以外のガストン・ルルーの本を読んだ人は、少ない。まあ、それくらいに、『オペラ座の怪人」が優れているということなんでしょうね。

「スペインの歌姫お得意の演目で、クリスティーヌが突然その力量を発揮することとなったのである!」

クリスティーヌ・ダーエは、オペラ座に出演する女優という設定。言うまでもなく『オペラ座の怪人』のヒロインでもあります。
ところで、ガストン・ルルーは、小説を書く以前には、新聞記者だった人。当時、新聞記者の間で。「オペラ座には幽霊が出るんだってねえ」という噂があって。この単なる噂を調べることで、『オペラ座の怪人』が完成したのです。原題は、『レ・ファントム・デ・ロペラ』。直訳すれば、「オペラ座の幽霊」になるのですが。その意味でも『オペラ座の怪人』は、名訳でしょうね。
1909年に、ガストン・ルルーはパリを離れて、ニースに転居。1909時の7月から『オペラ座の怪人』を書きはじめています。『オペラ座の怪人』は、『ゴーロワ』紙に連載されて、拍手喝采となったものです。
クリスティーヌが出てくる小説に、『ヴェルサイユ訪問、トランプをしている赤黒い顔の男』があります。ジョルジュ・シムノンの物語。

「クリスティーヌは、娘が小さいころ、ときどきヴェルサイユのおばあちゃんのところへ車でつれていったりしたが………」。

これはシムノンでも、「メグレ」の出てこない小説なのですが。
現在のフランスで、シムノンの後継者とも言いたい人物が、ピエール・ルメートル。ピエール・ルメートルが、2006年に発表したのが、『悲しみのイレーヌ』。この中に。

「グレージュのスーツ、同系色のシャツ、クリーム色のソックスといういでたちのルイが…………」。

ルイ・マリアー二は、フランスの警察官で、富豪の息子という設定。「グレージュ」は読んで字のごとく、淡いグレイとベージュとを混ぜたような色のこと。男であろうと、女であろうと、最高に優雅で、最高に着こなしの難しい色です。
一生に一度は、挑戦してみたいものですが。

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