ウィリアムとウエイストコート

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ウィリアムは、わりあい多い名前ですよね。ウィリアム・モリスだとか。
ウィリアム・モリスの名は今なお、「モリス・チェア」に生きています。ウィリアム・モリスは、1834年、英国に生まれた詩人。詩人であり、作家であり、美術家でもあった人物。自ら「ケルムコット・プレス」を興して、「神」のごとく崇高な書籍を創ったことでも知られています。
ウィリアムで、英国人で、作家。そうそう、モオムがいます。ウィリアム・サマセット・モオム。でも、どういうわけかウィリアムの名前はあまり使わないかった。それでミドル・ネームの、サマセット・モオムとして知られているわけですね。
モオムの自伝小説とも言いたいものに、『人間の絆』があります。長篇。この中に。

「彼女は、寝室に入ると、安レースでデコデコ飾った淡青色のティ・ガウンに着替えてきた。」

十九世紀の英国には、ティ・ガウンがあったのです。自宅でお茶の時間に、女主人が着るドレスのこと。当時でもティ・ガウンに限っては、コルセット不要の衣裳だと考えられたもの。そのかわり、というわけではありませんが。これでもか、というくらいに優雅で、装飾的でもあったドレス。
それはともかく、十九世紀の英国で、いかに「お茶の時間」が大切にされたかが、窺えるものでしょう。
紅茶が出てくるミステリに、『告発者』があります。ジョン・モーティマーが、1992年に発表した物語。

「それに厚切りのフライド・ブレッドと、強い紅茶という取り合わせで………」。

これはTVの脚本家、ディック・ダンスターの、朝食。「それに」というのは、毎朝、かならず ベーコン・エッグが出るので。そして、毎朝かならず、紅茶。また、『告発者』には、こんな描写も。

「ストライプの綿シャツが白い花柄を散らした濃紺のベストのせいでひきたっていた。」

これは、ペリグリン・グライスという男の着こなし。濃紺の、花柄のウエイストコート、いいですね。生地は何でしょう。ヴェルヴェットかなにかの、花柄のウエイストコート、着てみたいものですねえ。

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